【フタ止めシール廃止】カップヌードルのすごい構造

【フタ止めシール廃止】カップヌードルのすごい構造

2021年6月21日

こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。
https://stand.fm/episodes/60ba01e13612c631f7677b96

★フタ止めシール廃止の理由

1971年の誕生から、発売50周年を迎えた
日清食品の「カップヌードル」が、
フタ止めシールを廃止したことが話題となりました。
https://www.nissin.com/jp/news/9604

このシールは、お湯を注いで3分間待つときに、
フタが開いて、中身が冷めるのを防いだり、
十分に調理するためだったりするためのものですよね。

ファンからは惜しむ声が多いですが、
それでも廃止に至った理由は、
プラスチックの削減のためだそうです。
この廃止により、年間33トンのプラスチック原料が削減できるということで、
地球環境を考えてのことだったようですね。

★新しいフタの登場

一方で、ただ単にシールを廃止するだけではなく、
シールなしでも適切にフタを止めることができるように、
新しいフタを開発していました。

これが”Wタブ”と呼ばれるもので、これまでは1つしかなかったタブが、
左右に1つずつ、合計2つ設けられることになりました。
ネコの耳みたいで、カワイイですよね。
公式の動画でも、途中でネコのキャラが登場します。

おそらくですが、
このフタの形状も、何らかの形で知的財産権の取得に動いているのではないかと、
予想しております。

さすがに、この程度で特許はちょっと難しいかもしれませんが、
例えば、新しいフタの形状について意匠出願や商標出願をしている可能性は考えられます。

というのも、日清食品は知的財産にかなり力を入れてきた歴史があるからなんですね。

★カップヌードルのすごい構造

例えば、カップヌードルの麺は、カップと同じ逆円錐台形の型に入れて、
型ごと麺を揚げて製造しているんですが、
麺の上の方は密になって、隙間があまりない状態に、
下の方は疎になって、隙間がある状態になっています。
そして、カップの底よりも麺の塊の方を大きくすることで、
麺がカップの中間あたりで固定されるようにしています。
つまり、カップの下の方は空間が空いていて、
カップの中で麺が宙吊りになって浮いた状態になっているんですね。

最初は、なかなかカップに麺を収めるのが大変だったようで、
創業者の安藤百福氏が、寝ても覚めても考え続けたそうです。
そしてある晩に、布団に横たわっている時に、
天井が突然ぐるっと回ったような錯覚になって
「麺をカップに入れるのではなく、麺の上からカップをかぶせればいい
という逆転の発想で発明したそうです。

この構造について、カップヌードルの発売半年前に、
特許と実用新案の出願を済ませています。
(特許第924284号、実用新案登録第1428858号)

この構造の何が優れているかというと、
まず、麺が崩れにくいという特徴があります。
麺の側面がカップの内側面と密接するため、
輸送する際に麺が動かないで固定されているんですね。
なので、麺とカップがズレて崩れたり、
逆にカップが破損したりすることがなくなりました

また、上の方が密になっているので、
具材や調味料が上に乗ったまま
下の方に潜らないで済みます。
つまり、見栄えがよくて美味しそうに見えるんですね。

それから、上が密で下が疏の麺の形のおかげで、
お湯が麺に行き渡りやすいという特徴もあるようです。
これにより、他の即席麺よりも調理しやすいメリットがあります。

さらに、カップの直径が、底にいくにつれて狭まっているので、
片手で持ちやすいメリットもあります。
公園でピクニックとか山にハイキングとか、
そういったシーンでも手軽に食べられますよね。

以上、カップヌードルにはいろんな技術がつまっているということが、
わかったのではないかと思います。

★ブランド面でも優れてる

ただ、日清食品は、こういった技術面だけではなく、
ブランド面でもいろんな工夫をしているんですね。

今回のニュースでも、
「新しいフタを開発」ではなく、
「フタ止めシールを廃止」の方を強調していて、
ファンにノスタルジーを感じさせるというか、
心をつかむのが上手いなと思いました。

そういったブランド面については、
また別の機会に、知的財産の側面からお話したいと思います。

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。