廃業寸前の小さな印刷所から大ヒット商品が生まれた3つの理由

廃業寸前の小さな印刷所から大ヒット商品が生まれた3つの理由

※2022年7月12日配信メルマガVol.184より抜粋(一部加筆修正あり)

「おじいちゃんのノート」が大ヒットした3つの理由

東京都北区の廃業寸前だった小さな印刷所から、
ある方眼ノートが大ヒットしました。
その名も「おじいちゃんのノート」。

水平に開くことができる、使い勝手の良いノートということで話題になりましたが、
このノートが大ヒットしたのには、3つの理由があると考えられます。

①特許とノウハウを分けた

まず1つ目は、特許を取るところと、ノウハウとして秘密にするところを、
しっかり分けた
ことです。
「株式会社中村印刷所」名義で
「無線綴じ冊子の製本方法」という特許(特許第5743362号)を取得していますが、
接着剤の配合や塗布量といった、同業でも見た目にはわからないようなノウハウ部分は、
あえて特許を取得していません

特許出願をしてしまうと、内容が公開されてしまいますから、
このようなノウハウ部分を明かしてしまうことで、
模倣する人が増えてしまい、
自分達の首を絞めることにつながりかねないのです。

ここで、「特許が取れたら、権利行使して止めさせたり、
損害賠償請求すればいいんじゃないの?」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、本当に自社の特許を使ったのか、
パッと見ではわからないため、
立証するのが大変なのですね。
だから、あえて公開しないために、
特許出願をしない
という選択も重要なのです。
これを「オープン・クローズ戦略」と言います。

したがって、このノウハウは、
生産をサポートしてもらうべく守秘義務を交わした
ある中堅の印刷所だけに明かされて
いて、
他者が真似できないからこそ、
追随を許さないことができるというわけです。

②ツイートでバズらせた

2つ目は、同社の職人の孫娘がツイートでバズらせたことです。
中村印刷所の近くで製本業を営んでいた男性が、
店を畳んだタイミングで中村社長に声をかけられて、バイトとして入社。
2人で試行錯誤の末に、この方眼ノートを完成させましたが、
特許も取ったのになかなか売れずに、
大量の在庫を抱え
ました。

そこで男性は「学校の友達にあげて」と、
お孫さんにノートを渡したのですが、
学校でノートを使う人がいないということで、
Twitterでつぶやくことにしました。
宣伝費用がないから宣伝できないみたい
欲しい方あげるので言ってください!
すると、思いのほか多くの反響があり、
次々に注文が入るようになったのだそうです。

アナログな商品がデジタルなSNSで広がった点と、
職人の孫が発信したというストーリーがある点、
よりニーズのありそうな人に向けて呼びかけた点が、
多くの人の共感を得たのかもしれません。

③ストーリーのあるネーミング

3つ目は、「おじいちゃんのノート」というネーミングです。
前述の通り、特許を取ったのに売れない、
だから孫にあげたら、
孫がTwitterでつぶやいて、
注文が殺到した…
というシンデレラ(おじいちゃん?)ストーリーが、
「おじいちゃんのノート」というネーミングで言い表されています。

非常にわかりやすいですし、
普通の方眼ノートにはない、
機能的価値」も「情緒的な価値」も
両方兼ね備えたノートだと言えます。
多少値段が高くても手に取りたくなりますよね。

また、普通は「おじいちゃんのノート」というネーミングは、
説明的な言葉であるため商標登録されづらいです。
事実、一度は拒絶されたものの、なんとか審査で粘って、
商標登録
もされました(登録第5883433号)。

このように、「おじいちゃんのノート」は、
①特許を取るところと取らないところを分けて、
真似されづらい状態を作ったこと
②お孫さんがSNSでバズらせたこと
③一連のストーリーがネーミングとして表れていること
が、大ヒットにつながったのだろうと思います。

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