商標権を放棄する方法と注意点|一部放棄との違い・必要書類を弁理士が解説

商標権を放棄する方法と注意点|一部放棄との違い・必要書類を弁理士が解説

商標権を維持するには、更新料や管理コストがかかります。
事業方針の変更やブランド廃止により不要になった場合、商標権を放棄することが可能です。

この記事では、商標権放棄の手続や注意点を弁理士が解説します。


商標権の放棄とは

商標権の放棄とは、権利者が自らの意思で商標権を消滅させる手続です(商標法34条の2)。
放棄すると、その商標は誰でも自由に使用できる状態になりますが、第三者による新たな登録を防げなくなります


放棄の方法と必要書類

商標権を放棄するには、特許庁に申請書を提出します。

全部放棄の場合

  • 提出書類:放棄による商標権抹消登録申請書
  • 添付書類:商標権の放棄書
  • 収入印紙1件につき1,000円(弁理士に依頼する場合は別途弁理士費用が必要)

一部放棄の場合

  • 提出書類:商標権の一部抹消登録申請書
  • 添付書類:商標権の一部放棄書
  • 収入印紙1件につき1,000円(同上)

「一部放棄」は指定商品・指定役務の一部を抹消する手続であり、申請書の様式が異なります。


放棄の効力発生日

商標権の放棄は、特許庁で抹消登録がされた日に効力が発生します(商標法35条で準用する特許法98条1項1号)。
申請書を提出した日ではなく、登録完了日が基準です。


実務上の注意点

  • 専用使用権や通常使用権・質権が設定されている場合
    商標法34条の2により、それらの権利者の承諾がなければ放棄できません
  • 第三者による再登録リスク
    放棄後は他社が同じ商標を登録できるため、将来的なブランド復活の可能性がある場合は慎重な判断が必要です。
  • 一部放棄の影響
    残した部分との混同や競合の先取り登録を避けるため、事前に商標ポートフォリオ全体を見直すことが重要です。

まとめ

商標権の放棄は、権利維持コスト削減の有効な手段ですが、承諾要件や再登録リスクを十分に考慮した上で行う必要があります。
特に一部放棄では、「商標権の一部抹消登録申請書」の提出が必要で、戦略的な選定が欠かせません。

弊所では、放棄の可否判断、必要書類作成、特許庁手続までワンストップで対応可能です。
「放棄すべきか迷っている」「一部だけ整理したい」という場合もお気軽にご相談ください。