弁理士に頼まずに自分で商標出願することは可能?

弁理士に頼まずに自分で商標出願することは可能?

自分で商標出願ができたら、弁理士費用がかからない分、低コストで済みそう…そう思う方も多いでしょう。たしかに、商標出願は法律上、弁理士に依頼せず自分で行うことが可能です。

しかし、実際には多くの中小企業・個人事業主が弁理士に依頼しています。その理由は、専門的な知識が求められる上、手続上のミスや戦略不足が将来的に大きな損失につながる可能性があるからです。

この記事では、自力出願のメリット・リスクを整理し、弁理士に依頼することで得られるメリットをわかりやすく解説します。


自分で出願するメリット:確かに費用は抑えられる

  • 弁理士報酬が不要なので、出願費用だけで済む
  • 書類の作成・提出はオンラインで完結できる
  • 単純な文字商標や限定的な指定役務であれば、通るケースもある

こうした理由から、確かに「自分で出せそう」と思うのは自然な発想です。実際、特許庁の統計では約25%程度が自力出願となっています(特許行政年次報告書2025年版より。142,540件中35,760件が本人出願だった。ただし、大企業による自社出願も含まれるので、中小企業や個人事業主の出願はさらに少ない)。


でも自力出願には“見えにくい落とし穴”が多い

1. 手続ミスによる余分な対応・やり直し

書式の不備や内容の誤りで、特許庁との何度ものやりとりが発生することがあります。その間、本業の時間が削られ、無駄なストレスを抱えることになります。

2. 出願日が認められないリスク(商標法5条の2)

出願に不備があると、本来得られるはずだった出願日が認められないことがあります。その間に、他社が同一・類似の商標を出願すれば、あなたの出願は通らなくなる可能性があります。

3. 審査で拒絶されるリスクが高まる

指定商品・役務の表現が曖昧だったり、調査不足で先行商標と類似していたりすると、拒絶理由通知が届く確率が高くなります。対応方法がわからず、そのまま権利化を諦めてしまうケースも。

4. 指定商品・役務が不適切で「守るべき範囲」が守れない

自分で出願した場合、実際の事業内容とズレた商品・役務を指定してしまうことがあります。その結果、将来的に他社が似た商標を取り、逆に自社が相手の商標権を侵害してしまうリスクも生じます。指定商品・役務がズレていれば、商標登録していることを盾にすることができません


弁理士に依頼することで得られる安心感とメリット

リスク・課題弁理士依頼での対策
書類ミス、やり直し完成度の高い書類を一発提出
出願日が無効になる出願日確定に必要な書式・情報を正確に処理
拒絶理由通知の対応審査官との交渉・意見書作成などを対応
守るべき範囲が曖昧業務内容や業界動向、経営戦略に即した指定商品・役務の戦略設計

本業に集中するための知財戦略を

事業を始めたばかりのタイミングこそ、ブランドや商標の保護が大切です。

「自分で出せば安い」は短期的な話。将来的なリスクと、本業に充てるべき時間や労力を守るためにも、弁理士への依頼は非常に効果的な選択肢となります。


まとめ

  • 商標出願は自分でも可能。ただし、不備や拒絶のリスクが高く、結果的に遠回りになりがち。
  • 特に中小企業や個人事業主にとっては、弁理士に依頼することで時間・労力・リスクが大幅に軽減されます。
  • 出願前から弁理士に相談することで、長期的なブランド戦略や知的財産リスクへの備えが可能です。

「本業に集中したい」「確実に権利を取りたい」という方は、ぜひ弁理士への相談を検討してみてください。