商標権侵害品を止める!税関輸入差止申立完全ガイド

商標権侵害品を止める!税関輸入差止申立完全ガイド

財務省「令和6年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)」によると、2024年の知的財産侵害物品の輸入差止件数は33,019件(前年比4.3%増)、うち 商標権侵害物品は31,212件で全体の93.6% を占めました。

・令和6年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)
https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2024/20250307a.html

水際対策がますます重要になる今、税関への輸入差止申立手続きと実務上のポイントを弁理士が解説します。


税関における輸入差止申立とは?

法的根拠

  • 関税法69条の11〜13、商標法36条
  • 対象:商標権を侵害する物品

効果

  • 申立が認められると、該当貨物は通関手続を停止
  • 税関は輸入者と権利者双方に認定手続きを通知

税関輸入差止申立のメリット

  1. 無料で強力な水際対策
    • 申立自体に税関手数料は発生しない(弁理士に依頼する場合は、依頼手数料あり)
    • いったん認定されれば、類似貨物が見つかるたびに税関が自動的にストップ
  2. 輸入者を特定できなくても即時ブロック
    • 権利者が輸入者を特定・警告できない段階でも、税関の判断で通関を停止
    • 侵害品が国内市場へ流入する前に封じ込め可能
  3. 抑止効果が高い
    • 輸入者側は貨物が差し止められるリスクを負うため、模倣品を扱いにくくなる
    • 税関ウェブサイトや官報で公告されるため、業界全体への警告となる
  4. 4年間有効で更新可能
    • 一度認定されると最長4年間効力が続き、期限前に更新申請すれば継続的に保護
    • 中長期的に監視コストを抑えられる
  5. 国内訴訟より迅速・低コスト
    • 貨物が留め置かれるため、権利者は裁判を起こさずに侵害品を処分できるケースが多い
    • 裁判費用や和解交渉コストの削減につながる
  6. 証拠収集にも有用
    • 差し止め時に輸入者情報や貨物サンプルを取得でき、後続の民事・刑事手続きに活用可能

申立要件

  1. 有効な商標権、商標権者(専用使用権者でも可)
  2. 侵害の事実がある(侵害品(模倣品)の実物・写真)
  3. 侵害の事実を確認できる(侵害の事実が確からしいと判断できる疎明資料が必要)
  4. 税関で識別できる(真正品と模倣品の識別ポイントを示す)

輸入差止申立手続フロー

ステップ概要期間目安
① 事前相談最寄り税関知財部門でヒアリング要電話予約、1週間
② 申立書提出申立書+疎明資料+識別ポイントに係る資料等を電子・紙で提出受付
③ 審査利害関係者へ連絡、税関HPにて公表、専門委員意見照会1〜2週間
④ 意見書提出権利者・輸入者(利害関係者)双方10執務日以内
⑤ 受理・不受理通知受理なら水際取締開始を決定、税関HPで公表1〜2ヶ月
⑥ 認定手続侵害認定がなされると輸入差止(没収・廃棄)
⑦ 更新最長4年間(希望期間を設定可)。更新申請で延長可期限前3ヶ月

必要書類チェックリスト

  • 輸入差止申立書(税関様式C-5840)
  • 商標登録原簿の謄本及び公報
  • 侵害の事実を疎明するための資料等
  • 模倣品と真正品の識別ポイントに係る資料
  • 委任状等(代理人に手続きを委任する場合)

費用の目安

区分費用
税関手数料無料
弁理士手数料(申立書作成等)15万〜30万円
更新申請再提出書類作成分のみ

実務での注意ポイント

1. 識別資料は鮮明かつ網羅的に

現場判断を迅速化するため、真正品と模倣品の差異を赤枠などで明示

2. シリーズ商標・色違いも一括登録

派生ロゴや配色バリエーションが多い場合、代表例をまとめて提出

3. EC監視と併用

税関差止だけでなく、各国EC・フリマへの削除依頼を並行実施すると効果的


企業が今すぐ取るべき3ステップ

  1. 監視体制の強化
  2. 意匠・商標など権利ラインナップの再点検
  3. 早期に専門窓口や弁理士へ相談

相談窓口は経産省「政府模倣品・海賊版対策総合窓口」や、税関「知的財産担当窓口」。無料・秘密厳守で受付中です。弁理士への相談(初回30分無料)もご活用ください。


まとめ

  • 2024年の商標権侵害物品差止件数は 31,212件と過去最高水準。
  • 輸入差止申立は無料で最長4年間有効(更新も可)、抑止効果も高い。
  • メリットを最大化するには、鮮明な識別資料と適切な権利ラインナップが鍵です。
  • 模倣品リスクを最小限に抑えるため、早めに弁理士や政府窓口へ相談し、税関差止と監視を組み合わせた多層防御を検討しましょう。