マドリッド協定議定書(マドプロ)は、1件の国際出願で複数の締約国を一括カバーできる便利な制度です。
ただし基礎商標・出願人に関する要件を満たさない限り、国際出願は受理されません。
ここでは要件を商標面・出願人面に分けて整理し、最後に“セントラルアタック”対策も触れます。
目次
商標に関する要件
日本での基礎出願・基礎登録があること
日本国特許庁(JPO)で既に出願済み、または登録済みの商標が前提になります。基礎が拒絶・無効になると国際登録も取り消されるので、先に登録性を確認しておくのが安全です。
基礎商標と“同一のマーク”であること
国際出願に記載するマーク(図形・ロゴ・文字・色彩など)は、基礎出願/基礎登録と完全に同一でなければなりません。色やレイアウトを微修正すると要件を満たしません。
ただし、基礎出願が標準文字の場合、主張のないフォント(一般的な装飾のないゴシック体等)で記載された標章は同一の範囲内と認められます。一方、太字・イタリックで記載することはできません。
指定商品・役務が同一またはその範囲内であること
国際出願で列挙できる商品・役務は、基礎の指定範囲と同一か、そこから削除・限定した範囲に限られます。基礎より広い指定はできないため、追加区分が必要な国は個別出願を検討します。
出願人に関する要件
日本に“帰属”を有すること
- 日本国民(日本法人を含む)
- 日本国内に住所・居所・営業所を持つ外国人
いずれかであればマドプロ出願資格があります。
基礎出願(登録)の出願人・住所(居所)と同一であること
国際出願の名義は、基礎出願人/登録名義人・住所(居所)と完全一致していなければなりません。社名変更や組織再編がある場合は、まず基礎側の名義変更を済ませましょう。
具体的には、出願人が自然人の場合は、氏名を「姓→名」の順にローマ字で記載します。
(例:KOKUSAI Hanako(国際 花子))
法人の場合は、名称をローマ字に置き換えて、音訳又は英語へ翻訳して記載します。
(例:TOKKYO TARO KABUSHIKI KAISHA、PATENT TARO Corporation(特許太郎株式会社))
住所は、「番地 → 町名 → 市名 → 県名 → 郵便番号 → 国名」の順で記載します。
(例:4-3, Kasumigaseki 3-chome, Chiyoda-ku, Tokyo 100-8915 JAPAN)
補足:セントラルアタック対策
国際登録日から5年以内に基礎商標が拒絶・取消・無効になると、国際登録も一括で取り消されます。
対策
- 基礎出願を早期審査で速やかに登録へ導く。
- リスクの高い国には個別出願で先回りして権利取得する。
まとめ
- 商標要件:基礎出願/登録済み・マーク同一・指定範囲は同一か限定。
- 出願人要件:日本に帰属し、名義は基礎と一致。
- セントラルアタック:基礎商標の安定性を確保し、必要なら個別出願で補強。
マドプロ出願は手数料も大きいため、要件を満たさないまま出願すると時間もコストも無駄になります。疑問点があれば、経験豊富な商標専門弁理士へ早めにご相談ください。