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音も商標になる?今注目の「音商標」とは
商標といえば「文字」「ロゴ」「マーク」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、実は「音」も商標として登録できる時代になっています。
日本では2015年から「音商標」が制度として導入され、すでにいくつもの企業が登録・活用しています。
この記事では、音商標の基本・登録の条件・代表例・注意点まで、商標専門弁理士がわかりやすく解説します。
音商標とは?
商標法上、商標は「文字、図形、記号、立体的形状、色彩、音、動き、ホログラム、位置、またはこれらの結合」などが含まれます。
その中で、「音」だけで構成される商標が、音商標(サウンドロゴ)です。
たとえば以下のような音が該当します。
- CMのジングル(サウンドロゴ)
- アプリや機器の起動音
- 商品購入時の音声アナウンス
- キャッチフレーズの読み上げ
音を聞いたときに、「あの会社だ」と分かることが大切です。
音商標が登録されるための要件
✅ 自他商品・役務識別力があること
商標は、自分と他人の商品やサービスを識別するための標識(自他商品・役務識別標識)です。
そのため、音商標も「この音を聞けば、どこどこの会社の商品だとわかる」ような音である必要があります(必ずしも現在使用している事実が必要というわけではないですが)。
✅ 書面と音源データの提出
出願時には、音声ファイル(MP3)などに加えて、音の内容を可視化したもの(楽譜(五線譜)) を提出する必要があります。願書の「商標の詳細な説明」の欄で、音の内容を説明することもできます。
登録が認められにくい音の具体例
以下のような音は、識別力がないとして登録が認められないことが多いです。
- 商品やサービスの内容を表す音
例:商品「炭酸飲料」について炭酸の泡が弾ける音、役務「焼肉料理の提供」について肉の焼ける音など - 極めて簡単な音
例:単音の「ド」「レ」「ミ」など、短すぎて識別力がないとされる - 自然音
例:波の音、風の音、焚き火の音など、誰もが利用する自然現象音 - 楽曲(既成の音楽)
例:歌謡曲、クラシック、ジャズなどの楽曲全体
(商標としての識別力がないと判断されることが多い)
✅ 特に注意:「音楽的要素のみ」の構成は登録されにくい
歌詞やブランド名の読み上げがなく、旋律やリズム、和音のみで構成された音商標は、識別力が乏しいと判断されやすく、登録のハードルが非常に高くなります。
登録されている音商標の例
以下のような音が実際に商標登録されています。
※音商標の登録例(PCの場合は左上の▶️ボタン、スマホの場合は「Listen in browser」を押すと、音が流れます)
→ これらに共通しているのは、繰り返し使用され、聞き覚えのあるブランド的音であることです。
音商標の活用メリットと注意点
✅ ブランドの差別化・印象付けに効果的
- 視覚だけでなく、聴覚にも訴えかけるブランディングが可能
- CMや動画広告、店舗、アプリなどと相性が良い
✅ 注意:登録ハードルが高い
- 自他商品・役務の識別力がある音でなければ登録は難しい
- 願書の記載や準備する資料が特殊で、ミスが起こりやすい
- 場合によって、音声の使用実績や認知度が必要な場合もあり、戦略的な準備が重要です
弁理士に相談するメリット
✅ 登録可能性を事前に判断できる
- 提出する音の内容・使用実態・識別力の有無を、実務経験から的確に評価
✅ 出願書類・音声データの整備をサポート
- 音響スペクトルや説明文の作成、区分選定など、専門的な手続きも全面支援
まとめ|音商標は「聴覚に残るブランド」を守る新しい手段
- 音商標は、音によるブランド認識を守る新しい商標制度です
- 登録には条件がありますが、うまく使えば記憶に残るブランド構築が可能
- 気になる方は、ぜひ商標専門弁理士にご相談ください。