6月7日は「商標の日」?!商標の歴史を深く紐解く

6月7日は「商標の日」?!商標の歴史を深く紐解く

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※こちらの記事は、2021年6月7日に書かれた内容です。
ご了承ください。

今日が「商標の日」である理由

今日6月7日は、「商標の日」です。
と言っても、私が勝手にそう呼んでいるだけで、
特許庁や弁理士会などの公的な組織が定めた記念日ではありません。

ではなぜ、6月7日が「商標の日」なのかと言うと、
実は、今日は最初の商標法が生まれた日だからです。

今から137年前の明治17年(1884年)の6月7日に、
商標に関する初の法律にあたる「商標条例」が制定されました。
特許に関する初の法律にあたる「専売特許条例」は、
翌年の4月18日に公布されたので、
実は日本では「特許制度」よりも「商標制度」の方が先に始まったんですね。

それ以降改正を重ねて、
現在の法律は、昭和34年に全面改正された商標法に基づいて施行されています。

記念すべき登録第1号商標

そんな商標制度における記念すべき登録第1号は、
京都の平井祐喜さんによる膏薬丸薬、つまり薬に関するものでした。
登録第1号

商標登録第1号公報より引用

その商標がこちら↑
板前さんが指を切ってしまった様子が描かれていて、
この薬を塗ると傷が治るという商品の効能を表しています。
最初は文字の商標じゃなくて、図形の商標ばかり登録されていたんですね。
制度が始まった明治17年の10月1日に出願されて、
翌年の6月2日に登録を受けました。

こちらの登録は、すでに権利が切れておりますが、
現在も存続する最古の商標については、
以前の記事でご紹介していますので、
よろしければそちらも参照されてみてください。

現存最古の日本の商標
こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。 https://stand.fm/episodes/605411a71f2dc0769bc9324f 以前の記…
samuraitz.com

ちなみに、同じ日に全部で29件も登録されているのですが、
第1号以外の他の商標は知られていないので、
ちょっとの差が大きな違いであるとも言えますね。
2位以下じゃダメなんですということです。

商標を守るしくみはもっと前からあった?!

このように、明治17年(1884年)から商標制度が始まったわけですが、
商標を守ろうとするしくみ自体は、
もっと昔から日本にも存在していたようです。

江戸時代には、他の商店との見分けのしるしとして
暖簾印」が使用されてきましたが、
これは単に「商品の良し悪し」を示すというより
「信用」を表す表示として用いられていました。

「暖簾印」によって取引するかどうかが決められることもあったようで、
まさに現在の「商標」と同じ働きをしていることがわかります。

こういった事情から「暖簾分け」は重要な意味を持っていて、
暖簾の信用をもとに商売ができる代わりに、
別家は本家の暖簾が傷つかないように守ろうとする慣習がありました。

また、「暖簾印」を傷つけるような事件が起こると、
同業者間でその是非を審理し、結果を奉行所へ持ち込む
という自治制度がはたらいていたんですね。

現在ではその役割は裁判所が担っていますが、
当時は同業者間で判断をするという点で、
今以上に「信用」を大事にしていたことがわかります。

日本が「企業ブランド」、米国が「製品ブランド」から発展した理由

この「暖簾印」をさらにさかのぼると、
家紋」や「武家紋」という、
世界でも珍しい日本古来からの“家の紋章”がもとになっているようです。

日本は家を重んじてきた歴史があり、
それがこういった形で現れているんですね。

米国の企業が主に「製品ブランド」の集まりで構成されているのに対し、
日本の企業が「製品ブランド」より「企業ブランド」として発展してきたのも、
「家」を重んじてきた背景が影響しているのかもしれません。

※参考:「商標の歴史/登録商標研究の一」(神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100115384

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。