商標の出願件数は、本当に増えたのか?

2017年6月30日

持続可能なブランドコミュニケーションをつくる
「サムライツ™」の弁理士、保屋野です。

特許庁より「特許行政年次報告書2017年版」が発行され、昨年の出願件数が判明しました。

2016年の商標出願件数は161,859件(そのうち国際商標(マドプロ)出願は13,835件)で、過去最多だそうです。
2015年は147,283件なので、14,576件増、前年比110%くらいですね。

数字だけ見ると、「商標出願件数が増えている」といえるのですが、ちょっと注意が必要です。なぜなら、「PPAP」等でおなじみの「大量出願問題(商標トロール問題)」があるからです。

「商標トロール」というのは、自社は商標を使用する予定がないにも関わらず、先取りして他者が使用する商標を商標出願して、その他者の業務の邪魔をして大金をせしめるために侵害警告を行う業者のことです。

そんな商標トロールであるB社と、その代表U氏だけで、2016年は25,650件も出願しています。これを差し引いたら、本当に全体で前年より増えているのだろうか?と疑ってしまいますね。ちなみに、2015年は14,786件だったので、確かに件数全体の増加数の方が上回っています。しかし今や、B社およびU氏の他にも、トロール業者が出始めていますので、”まともな出願”の件数増加は見かけの数字ほどはない、とも言えるでしょう。

統計をそのまま鵜呑みにしてしまうと、本当の状況は見えてきません。
日経なんかでは、こんな記事(http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H4N_Z20C17A6EE8000/)も出ていますが、それは本当だろうか?と疑ってみる姿勢も大事ですね。