※2021年9月28日配信メルマガVol.143より抜粋(一部加筆修正あり)
ビジネスを守る上での商標権取得の利点
前回、前々回と、商標出願や商標登録を「投資」として捉えていただくために、
「ビジネスの発展」と「組織の発展」の両側面から商標の活用方法についてシェアいたしました。
そこで今度は、商標権を取得したことにより、どのような利点があったのかについてご紹介いたします。
まずはイメージしやすい「ビジネスの守り」の側面を、
次回は「ビジネスの攻め」の側面で利点をまとめていきます。
今回も、特許庁の調査研究報告からシェアしつつ解説をしていきます。
※以下、引用符(””)部分は「商標権取得による効果及び商標制度の活用に関する調査研究報告書」より引用
https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota/document/zaisanken-seidomondai/2018_01_zentai.pdf
①安心して商標を使い続けられる
まずは、「安心して商標を使い続けられる」ことです。
これは、個人、中小、大企業ともに、最も効果を感じている利点になります。
実際に権利侵害で揉め事が生じることは少ないですし、いつ生じるかも不明ですよね。
なので、商標権を行使する機会というのは、特に日本では極めて少ないです。
一方で、自社で使っている商標が使えなくなってしまうと、
商標を変更しなければならず、その手間もある上に、
せっかくマーケティング活動で獲得した認知度がリセットされてしまう恐れがあります。
したがって、
商標権を取得する目的は、自社製品として世の中に認知してもらい、一定の品質を確保していることの証として使用する商標を他人に権利化されて自社で使えなくなると大変なことになるため。(製造業)
といった声も上がっています。
当方のお客様からご依頼をいただく際にも、
商標権を取得する動機をお伺いすると、
「他者に真似されないように」といった目的よりも、
「自社が他者から訴えられたりせず、安心して使えるように」といった目的が多いです。
この点から、お客様が期待している利点と、
登録されたことで実感している利点が一致していると言えます。
ちなみに、安心して商標を使い続けることで、
ブランドの認知度が上がり、
ビジネスに良い効果をもたらしているとも言えます。
守りを固めることは、攻めを強くすることにもつながるのですね。
②模倣品対策に有効
次は、「模倣品対策に有効」という点です。
税関の水際取締で、模倣品で摘発されるのは多くが商標権侵害によるもの。
商標は真似しやすく、ぱっと見本物かどうか見分けがつきにくいことから、
模倣品を排除するために商標権を取得することが有効なのですね。
ヒット商品がでて需給バランスが崩れてくると品質の低い模倣品が増加する。まずは、税関対策をしっかり行った。(製造業)
とあるように、
商品が売れてくると、そのブランド力に便乗しようと模倣品が出現しやすくなるので、
商標権が特に効果を発揮し始めるタイミングになります。
eコマースの発展により模倣品が販売されることが増加したが、日本や中国のeコマースのサイトでの模倣品の出品削除を求めるために商標権を活用している。(製造業)
現在はネットでものを買うのが当たり前になっており、模倣品が増加しやすい背景もあって、商標権の取得の重要性が高まっています。
では、売り上げが上がってきたらでいいのか?というと、そういうわけでもなく、
類似品が出てきたら、規模が大きい小さい、売上に与える影響が大きい小さいにかかわらず警告をうち、誠意ある対応が得られなければ訴訟を提起する。こまめに対応することで類似品が出なくなってきた。(製造業)
とあるように、
初期の段階から商標権を取得して、模倣品対策をこまめに行うことで、
相手を牽制することができるから、予防策にもなるんですね。
先ほどは、「安心して商標を使い続けられる」安心感があることについて触れましたが、
こちらは、「商標を真似されない」という安心感があると言えます。
③普通名称化を防止する
そして、「普通名称化を防止する」点です。
「普通名称化」とは、本来は自社と他者の商品・サービスを見分けるための商標として使われていた名称が、
ある種の商品・サービスを表す一般的な名称として、広く一般的に使われることで、
もはや商標としての効果を失ってしまった現象を指していいます。
例えば、「エスカレーター」や「正露丸」、「巨峰」や「サニーレタス」といったものがあります。
これらは元々は商標でしたが、今や誰もが使える普通名称になってしまったんですね。
普通名称化してしまうと、無断で名称を使用している人に対して、
使用をやめさせることができなくなってしまうので、
実は非常に恐ろしい事態になります。
アンケートには
自分や他人(辞書やメディアなど)が登録商標を使用するとき、「登録商標」の文字や「R」を併記したり、登録商標である旨の説明文を記載するなどを行う・行わせることにより、その商標が普通名称化することを防止できた
という声があり、
商標権を取得した後のアクションとして「登録商標」であることの表記を積極的に示すことができるので、
普通名称化を防止することができているようです。
以上の3つの点から、商標権を取得することに利点があることが明らかだと考えられます。
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