※2020年6月2日配信メルマガVol.74より抜粋(一部加筆修正あり)
目次
スルースキルだけでは足りない「企業の誹謗中傷」
恋愛リアリティー番組「テラスハウス」の出演者の方が、
SNSで誹謗中傷を受けたことをきっかけに亡くなりましたが、
この誹謗中傷は、個人だけでなく企業も受けることがあります。
企業が誹謗中傷を受けた場合は、
売上の低下、信用の低下につながり、
そこで働くスタッフのモチベーション低下、採用の困難化、取引の停止などが起こる可能性があります。
したがって、個人のように「スルースキルを身につける」だけでは不十分と言えます。
では、いざ誹謗中傷されてしまった場合、どのような対処法をとることができるでしょうか?
法的対応前にすること
法的対応の前に、
次の3点を行うことが大切です。
(1)事実の収集と保存
まずは、「事実の収集と保存」が必要です。
記事を削除されてしまった後では、何もすることができないからです。
もちろん、削除された時点でさほど影響がないのであれば、何もする必要はありません。
収集する事実は、
例えば、当該書き込み部分の画像、投稿の日時、該当ページのURL、投稿者のアカウント(ID)やプロフィールなどがあります。
複数ある場合は、投稿者ごとにフォルダに分けて整理しても良いでしょう。
保存の仕方は、JPEG等の画像ファイルでなく、PDFでの保存が望ましいと考えています。
その際は、URLと日時が自動的に記録されるように、あらかじめ設定をしておくと便利です。
最近は、誹謗中傷をAIでモニタリングしてくれるサービスもあります。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000039683.html
また、記事の真偽の調査も並行して行うといいでしょう。
事実か事実無根かで対応も変わってきます。
(事実に基づいていても、後述の名誉毀損が成立する場合があります)
関係者にヒアリングを行う等して、調査してみてください。
(2)記事の削除依頼
次に、サイト管理者やサーバー管理者に対し、記事の削除依頼を行います。
プロバイダ責任制限法に基づき、削除を請求する部分を具体的に特定し、
自社の権利侵害に当たる具体的な事実を示すことが必要です。
(3)相手方の特定
削除依頼と同時に、サイト管理者やサーバー管理者に、IPアドレス等の発信者情報の開示請求を行ってください。
法的対応をする際の相手方特定に欠かせない情報です。
ただし、任意で開示に応じないことが多いです。
したがって、裁判所に対し「発信者情報開示を求める仮処分命令」を申し立てて、
それを取得してから、発信者情報を開示してもらうのが得策です。
法的対応
誹謗中傷の事実と発信者情報を確保したら、
次に、「法的対応」を検討することになります。
「民事上の対応」と「刑事告訴」がありますが、
これは基本的に自社だけで対応せず、弁護士に依頼した方がいいでしょう。
民事上の対応
民事上の対応には、
「不法行為に基づく損害賠償請求」と
「名誉毀損における原状回復(名誉回復措置)請求」
があります。
●損害賠償請求
投稿の事実、売上低下の事実(損害額も含む)、これら事実の因果関係
を証明することになります。
損害額はケースバイケースですが、
事実に基づかない、虚偽の内容による誹謗中傷の場合は、
損害額が高くなる傾向です。
●名誉回復措置請求
「損害賠償請求」の代わりに請求することもできますし、
共に請求することもできます。
名誉回復の方法としては、新聞や雑誌、ウェブページ等に、謝罪広告・訂正広告・取消広告等を掲載してもらいます。
重大な被害で、謝罪広告では名誉回復困難の場合は、対象の記事等の公表行為・出版行為自体を差し止めることも可能です。
刑事告訴
刑事告訴は、
「名誉毀損罪(刑法第230条1項)」「侮辱罪(刑法第231条)」
「信用毀損罪(刑法第233条)」「偽計業務妨害罪(同条)」
「威力業務妨害罪(刑法第234条)」
などが挙げられます。
それぞれ構成要件が異なっているので、
弁護士と相談してどれで進めるかを検討されてみてください。
自社の社員が誹謗中傷していた場合
なお、誹謗中傷を、自社の社員が行っている場合もあるかと思います。
もし、勤務時間内に勤務場所で行っているとすれば、
「就業規則の服務規定違反による、懲戒解雇処分」
が可能なケースもあります。
ただし、適切な内部告発の場合もあるので注意が必要です。
仮に、懲戒処分が難しくても、上記と同様、民事上の損害賠償請求と刑事告訴ができることもありますので、
泣き寝入りする必要はありません。
「表現の自由」もある
以上、会社の誹謗中傷への対処法をまとめましたが、
記事等で意見を述べることは、基本的には「表現の自由」として認められているため、
違法性が認められない場合もあります。
重要なことは、「売上や信用の低下にならないこと」ですので、
誹謗中傷の内容が事実に基づかないことを
自社HP等で表明しつつ、
1つ1つ対応に値するか検討することが大切ですね。
※誹謗中傷対策は、弊所ではご相談に対応することができませんので、ご注意ください。ご相談は弁護士のいる法律事務所にお問い合わせください。
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