「意匠と著作権って同じ意味じゃないの?」
ビジネスの現場でよく混同されるこの2つの言葉ですが、実は大きな違いがあります。
この記事では、弁理士の視点から意匠権と著作権の違いを整理し、どのように使い分けるべきかを解説します。
意匠権と著作権の基本的な違い
項目 | 意匠権 | 著作権 |
---|---|---|
根拠法 | 意匠法 | 著作権法 |
保護対象 | 物品・建築物・内装・画像などの形状等であって「視覚を通じて美感を起こさせるもの」 | 文芸・学術・美術・音楽など「思想又は感情の創作的な表現」 |
登録の要否 | 特許庁への出願・審査を経て登録が必要 | 登録しなくても、創作と同時に自動的に権利発生(無方式主義) |
保護要件 | 新規性・創作非容易性・工業上利用可能性等 | 思想又は感情・創作的・表現したもの・文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する |
権利発生時期 | 設定登録の日から | 創作した瞬間から |
存続期間 | 出願日から25年間(更新不可) | 著作者の死後70年(法人著作等は公表後70年) |
権利内容 | 登録意匠と類似範囲まで独占できる | 著作物の複製・翻案・公衆送信などをコントロール |
侵害立証の難易度 | 類似性の判断が中心で比較的明確 | 依拠性・類似性の両方が必要で立証が難しい場合あり |
意匠権で守れるものの例
- 家電製品(例:バルミューダのトースターや炊飯器)
- 化粧品容器(例:資生堂の美容液ボトル)
- 店舗の内装(例:蔦屋書店、くら寿司)
- アプリのGUIやアイコン(例:Googleの検索アプリ画面)
これらは「産業として利用されるデザイン」であるため、意匠権の対象となります。
著作権で守れるものの例
- 絵画・イラスト・ロゴデザイン
- 書籍や雑誌、Web記事などの文章
- 写真・動画
- 楽曲・プログラムコード
著作権は「創作性があればよい」ため、工業的利用が前提でなくても保護されます。
両者が重なるケース
実務では、1つのデザインに両方の権利が関わるケースも考えられます。
- プロダクトデザイン:工業的に量産 → 意匠権、芸術性 → 著作権
- UIデザイン:機能的デザイン → 意匠権、独自の表現性 → 著作権
- キャラクターデザイン:商品化 → 意匠権、イラストとして → 著作権
例:かつて、芸術家・岡本太郎の作品の一部に意匠登録されていたものがありますが、現在は著作権で守られている可能性があります。
実務上のポイント
- 意匠権の方が「模倣対策」に強い
→ 登録意匠と「類似」する範囲まで差止・損害賠償が可能。 - 著作権の方が「広範囲の表現」を守れる
→ 登録不要で、創作した瞬間から保護。 - ブランド戦略では両方を意識するのがベスト
→ 物の形状・内装 → 意匠
→ 広告・イラスト・キャラクター → 著作権
まとめ
- 意匠権は登録が必要で25年間、工業的デザインを独占的に守る。
- 著作権は自動的に発生し、死後70年まで、幅広い創作的表現を守る。
- 実務では「意匠+著作権」両方関係するものは組み合わせて活用するのが有効。
弊所では、
- 意匠登録の可否調査
- 著作権との組み合わせ戦略
- ブランド全体を守る知財ポートフォリオ設計
までワンストップでサポートしています。
「自社のデザインをどう守るべきか」とお悩みの方は、ぜひご相談ください。