大ヒットランドセル「天使のはね」と知的財産

大ヒットランドセル「天使のはね」と知的財産

こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。
https://stand.fm/episodes/605e9b0cb5b86678ec098107

※こちらの記事は、2021年3月26日に書かれた内容です。
ご了承ください。

もうすぐ3月も終わりということで、これから、入園・入学・入社のシーズンですね。
みなさまの中にも、お子さんが幼稚園に入園するとか、
甥っ子姪っ子が今度中学生でといったこともあるんじゃないかなと思います。

そしてやっぱり小学生といえば、
新しいピカピカのランドセルを背負って
通学する姿、可愛いですよね。

私の時代は、ほぼ全員、男の子が黒で、女の子が赤のランドセルを使っていましたが、
今は、紺色とか薄紫とか、ピンクとか茶色とか、いろんな色のバリエーションがあります。
縁の部分が彩られたり、刺繍がついてたりするものもありますね。
個性や多様性が重要視される、今の社会を反映しているなと思います。

セイバンのランドセルから「天使のはね」が登場するまでの歴史

そんなランドセルの業界でトップシェアを誇るのが、
セイバンという会社の「天使のはね」です。
「背筋ピーン」のCMでも話題になりましたね。
2003年の販売から、一時は50%ものシェアがあったそうです。

セイバン社がランドセルの生産を始めたのが1946年で、
ランドセル自体が普及し始めたのが1950年代~60年代の高度成長期ですから、
まさにランドセルの普及に貢献した立役者といっても良いでしょう。

そしてセイバン社は、1970年代頃から
「背負いやすさ」を追求して、
肩のベルトのつけね部分の改良を重ねていきました。
背負いやすさの時代」ですね。

それから次第に、
ランドセルは「軽さの時代」にシフトしていきました。
1993年には、
「わずか740gのランドセル」として、
セイバンのランドセルがギネスブックに登録されます。

ただ、ランドセル自体を軽くしても、
教科書とかを入れると重くなりますよね。
子供たちの肩と腰にはかなりの負荷がかかって、
健康にも影響を与えます。

そこで新たに誕生したのが、
「天使のはね」
です。

「天使のはね」の登場と名前の由来

「天使のはね」は、当時の常務が四国のお遍路めぐりをしたときの気づきがヒントで誕生しました。
皆さんも経験があると思いますが、
重いものでも、高い位置で背負うと少し軽く感じますよね?
そこで、重心を高くして体感する重さを軽くするために、
肩のベルトのつけね部分にプラスチックのパーツを入れたのです。

とはいえ、耐久性も大事ですし、開発には時間がかかりました。
このパーツの改良を重ねること3年で、
ようやく「天使のはね」が登場しました。

このパーツの形状が左右1対で天使の羽根に見えることから、
「天使のはね」というネーミングがつけられたんですね。

てっきり、子供たちが天使だからつけられたのかなと思いましたが、
部品の形状からきた名前だったのは意外でした。
軽いイメージもあるし、良い名前ですよね。

もちろん、「天使のはね」という名前も、
翼の形状のロゴマークも、商標登録されています(登録第4642942号、登録第5705762号)。

類似品の登場と、知財意識の向上

ところが、当時のランドセル業界では、
特許や実用新案といった技術を保護する権利を取得することがなかったそうで、
「天使のはね」の類似品が次々と登場しました。

セイバン社も、実用新案権などを取りましたが、
ライバルによって登録を無効にされてしまったこともあります(無効2005-040001)。

それからは、セイバン社も、
開発時から特許や商標、それから意匠などの知的財産を意識するようになったんですね。

「美観」と「機能」、両方カバーする「意匠権」に注目

特に、デザインの権利である「意匠権」については、
デザインの「美観」だけではなく、
デザインが持つ「機能」までも保護できる権利として、
注目されています。

例えば、肩のベルトのつけね部分の取り付け具は、
「天使のはね」の名前の由来のプラスチックと接続する部分で、
軽く背負うことができる重要な機能を果たすところですが、
そのデザインは「意匠権」で保護されています。

小学生が気にも留めない、部品のデザインをわざわざ権利化するの?
と思うかもしれませんが、
結局、「この形状でなければ、この機能が実現できない」という場合には、
デザイン=機能なので、
機能の保護のために「意匠権」を取ることが有効になるんですね。

そこで意匠権を取ることができれば、
他社はそのデザイン=機能を真似できないわけですから、
競争力を高めることができるというわけです。

以上、ランドセル「天使のはね」は、
商標権や特許権といったいくつかの知的財産権が支えていて、
特にデザインの権利である「意匠権」については、
「美観」と「機能」の両方を守れる
優れた性質があるということを覚えていただければと思います。

※参考:
・セイバンHP
https://www.seiban.co.jp
・PATENT Attorney VOL.100
https://www.jpaa.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/12/patent-attorney_Vol.100.pdf

※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。