事業を成長させるうえで「ブランド戦略」は不可欠です。
その中で意匠は、商標と並び「ブランドを差別化する強力なツール」として活用されています。
この記事では、弁理士の視点から 有名企業の具体事例 を交えて、ブランド戦略における意匠の活用法を解説します。
目次
意匠をブランド戦略に活かす意義
- デザインの独自性を守る
消費者は「見た目」で商品を選びます。独自のデザインを意匠権で守ることで模倣を防ぎ、ブランドの価値を守れます。 - 顧客体験の一貫性を高める
製品デザイン、パッケージ、UI などを意匠登録することで、ブランドの世界観を統一できます。 - 事業資産としての価値
意匠権はライセンス・譲渡・担保設定も可能で、M&Aや資金調達でも評価される資産となります。
ブランド戦略における意匠の具体的な活用法と事例
1. 製品デザインをブランド資産化する
- アップル(Apple)
iPhone・MacBookなどの独特なデザインは数多く意匠登録されています。特に、かつて存在したiPhoneのホームボタンや角が丸みを帯びた筐体などは意匠で守られ、競合スマホとの差別化につながりました。また、充電器などの周辺機器も意匠登録されています。
- バルミューダ
家電製品の特徴的なフォルムを意匠登録し、「デザイン家電ブランド」として市場を確立しています。
2. パッケージや容器デザインを保護
- コカ・コーラ
1915年に登場した「コカ・コーラのボトル形状(コンツアーボトル)」は米国で意匠登録され、権利の存続期間満了後も、立体商標登録により100年以上にわたりブランドを象徴するアイコンとなっています。模倣ボトルの排除にも活用されました。
商標登録第5225619号
(コカ・コーラの瓶の形状についての立体商標) - 資生堂
化粧品ボトルの形状や容器デザインを意匠登録し、高級感やブランドイメージを守っています。
3. 店舗デザインや空間デザインを保護
- 蔦屋書店(CCC)
店舗の内装デザインが意匠登録されており、「居心地の良い空間」「知的なライフスタイル」を表現するブランド戦略の一環となっています。
意匠権により、競合が模倣した店舗デザインを展開することを防ぎ、独自の世界観を守っています。
意匠登録第1671152号
(羽田空港 蔦屋書店の内装) - くら寿司
やぐら建ての店舗内装(浅草ROX店など)が意匠登録され、店舗の雰囲気そのものを権利化しています。
意匠登録第1671153号
(くら寿司 浅草ROX店の内装)
4. デジタル領域(UI・アイコン)の意匠
- Google
検索アプリや地図アプリ等のアイコンや UI(操作画面)を意匠登録し、ユーザーが安心して「公式アプリ」を識別できるようにしています。
5. 商標と意匠の組み合わせによる防衛
- アステラス製薬のヘルスケアアプリのアイコン画像
アステラス製薬のヘルスケアアプリ用のアイコン画像は、意匠と商標の両方を登録しており、商標+意匠の二重防衛で模倣サービス対策を強化しています。
実務上のポイント
- 出願のタイミング:公開前に出願(新規性喪失に注意)
- 関連意匠制度:バリエーションデザインもまとめて保護可能
- 部分意匠:製品の特徴的な一部だけを守ることで、模倣を防ぐ範囲を広げられる
- 商標との組み合わせ:自他商品等の識別標識としてなら商標、形状や見た目の新しさとしてなら意匠で守る。どちらの側面も持っているなら両方登録がベスト。
まとめ
意匠は「見た目を守る権利」であると同時に、
ブランドの差別化・顧客体験の一貫性・事業資産としての評価 に直結する経営ツールです。
有名企業の事例が示すように、商標と意匠を組み合わせたブランド戦略は、市場での優位性を築くために不可欠です。
弊所では、
- ブランドに合わせた意匠出願戦略
- 商標との組み合わせによる防衛プラン
- 海外展開を見据えた意匠ポートフォリオ設計
までトータルにサポートいたします。
「デザインをブランド資産に育てたい」という方は、ぜひご相談ください。