こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。
https://stand.fm/episodes/61deb22285713000066830bd
先日ニュースになっていたのですが、
チョークで絵を描くアーティストさんが、
海外のカメラマンの写真の作品を絵にしていて、
これは権利侵害ではないか?
と指摘されて問題になっているそうです。
写真をコピーしてるわけじゃないんだし、
いいんじゃないの?
と思うかもしれませんね。
しかし、これは著作権侵害や肖像権侵害になる可能性があります。
あくまでケースバイケースですが、
ちょっと注意した方がいいです。
★複製権
写真に著作権が発生していることが前提ですが、
写真をそのまま忠実に絵に描くことは、
著作権の中の「複製権」の侵害になる可能性があるんですね。
やっぱり写真も構図とか光の加減とかに創意工夫があるわけなので、
そういう創作部分をそのまま表現するのは侵害になってしまうことがあります。
★翻案権
それから、写真を絵にする行為は、
著作権の中の「翻案権」の侵害になる可能性があります。
こちらは、元の写真と同じ特徴を維持しつつ、
表現に修正などを加えて、新しく創作したものが該当します。
なので、まんま丸パクリじゃないので「複製権」の侵害にはならないけど、
元の作品を利用してるわけなので、
よくないというわけです。
ちなみに、元の著作物を元に、新たに創作した著作物を、
「二次的著作物」と言います。
ここでは写真を元にして描いたチョークの絵が「二次的著作物」になります。
この「二次的著作物」を作る行為が「翻案権」侵害になるということです。
★同一性保持権
また、元の写真の表現に改変を加えていると見れば、
これは、著作権とは別の「著作者人格権」の中の「同一性保持権」侵害になる可能性があります。
写真を撮ったカメラマンからしてみれば、
自分の表現を勝手に変えないでくれと言う気持ちになるかもしれないですよね。
そうなると、カメラマンの意に沿わない改変がされたということで、
「同一性保持権」侵害というのが問題になってきます。
★肖像権・パブリシティ権
さらに、人物を撮った写真は、被写体の権利というのも認められます。
それが、「肖像権」とか「パブリシティ権」と呼ばれるものです。
「肖像権」は、無断で写真を公表されたり利用されたりしないよう主張できる権利ですが、
写真に忠実に描いた「肖像画」も該当すると言われています。
それから、「パブリシティ権」は、
著名な人にはその肖像とか名前にブランド価値があって、経済的な利益を生み出す力があるから、
それを勝手に使わないでと主張できる権利です。
この2つの権利は、法律で認められた権利ではないですが、
裁判とかで問題になって、認められることがあります。
以上、今回はニュースを題材にして、
他人が撮った写真を勝手に描くのは権利侵害になるのかどうか?
についてお話ししました。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。