こちらのブログ内容は、音声で聞くこともできます。
https://stand.fm/episodes/6046e1d52d51f42c772bf98b
今回は、ご質問をいただいたので、それについてお答えします。
★ご質問
Tomokoさんより
★結論
最初に結論を言いますと、
おそらくTomokoさんご自身の著作物になるのではないかと考えられます。
ただ、これは少し微妙なケースなので、解説をします。
★職務著作
まず著作権法の原則としては、
著作物であるエッセイを実際に創作した人、
つまりTomokoさんが著作者となり、
Tomokoさんに著作権が発生します。
しかし、原則には例外があります。
従業員が著作物を創作した場合で、一定の要件を満たす場合は、
勤務先の法人が著作者となり、法人に著作権が発生します。
これを「職務著作」と言います。
その一定の要件というのは4つあって、
①法人等の発意に基づくこと
②法人等の業務に従事する者が職務上作成したこと
③法人等の著作名義で公表すること
④契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと
の4つです。
★①法人等の発意に基づくこと
これは、創作することが、勤務先の会社の判断でされている場合が該当します。
必ずしも、会社から社員に対する具体的な指示や命令がなくてもよく、
著作物の作成についての意思決定が使用者の判断によるものであれば該当します。
今回のケースは、Tomokoさんご自身が「自主的に」書いているということなので、
おそらくこれに該当しないのではないかと考え、
冒頭の結論になりました。
もちろん、上司の方から「エッセイ書いて送って」と指示されていたなら、
こちらの要件に該当しますし、
Tomokoさんに対して、何かしら報告書を求められていて、
それをエッセイという形で提出していた場合も、
要件に該当するように思います。
ところが、上司の方の「誤解を解くため」に、
「自主的に」送りつけているとのことなので、
こちらの要件には該当しないと考えました。
★②法人等の業務に従事する者が職務上作成したこと
これは、創作した社員と会社の間に雇用関係がある場合が該当します。
また、派遣社員も該当しますし、
業務委託や請負のように雇用関係にない場合であっても、
その会社の指揮命令を受けながら創作して、
その会社から対価をもらっている場合は該当する可能性があります。
実際の裁判事件でも、そのような判断が下されています。
それから、勤務時間中はもちろんのこと、
勤務時間外でも、職務に基づいて作成するものは該当します。
昨今のような在宅勤務の場合も同様です。
この点は、Tomokoさんもお勤めの会社での話なので、
該当していると考えられます。
★③法人等の著作名義で公表すること
会社名義で公表するという意味ですね。
未公表であっても、公表するとしたら会社名義で行う場合は、
該当します。
Tomokoさんの場合は、そういった事情はないようですし、
Tomokoさんご自身を知っていただくためのエッセイを、
会社名義で公表することも考えにくいので、
この要件には当てはまりません。
★④契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと
ほぼ存在しないケースですが、
雇用契約や社内規定などで、社員に著作権があると定めている場合です。
こちらは、各自で契約書や規定をご確認ください。
★まとめと補足
以上より、Tomokoさんの場合は、
要件の①と③に該当しないと考えられるので、
エッセイについては
「Tomokoさんに著作権が発生する」
とお考えいただければ大丈夫かと思います。
普段みなさんがお仕事の中で、
業務として作成している文章などの著作物は、
概ね、①~④の要件に当てはまります。
つまり、職務著作に該当して、
勤め先の会社に著作権があると思われるので、
取扱には十分ご注意ください。
ちなみに、Tomokoさんは一部上場企業の管理職を務める優秀な方で、
とても知的で聡明な女性なので、
Kindle出版も面白い内容になると思います。
参考にされる方、楽しんでくれる方がいらっしゃると思うので、
ぜひ出版していただきたいですね。
それから、会社のメールサーバーに保管されているということですが、
出版するときに、なるべく会社が特定できないように気をつける方がいいかなと思います。
私の専門外の話になってしまうのですが、
もし会社を非難するような内容、名誉を傷つけたと受け取られる内容が含まれる場合は、
下手したら懲戒解雇のような処分を受けることも考えられます。
この辺りが心配でしたら、弁護士さんにご相談されることをおすすめいたします。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。