たった1人で世界最大手から研究費を引き出した方法

たった1人で世界最大手から研究費を引き出した方法

※2021年4月13日配信メルマガVol.119より抜粋(一部加筆修正あり)

研究内容の差は研究費の違い

2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智先生は、
抗寄生虫薬「イベルメクチン」の開発で著名ですが、
「産学連携」の先駆けとしても知られています。

大村先生は、36歳でウェズリアン大学に留学した際に、
「アメリカの研究現場は、
日本とは比べ物にならないくらい豊かな研究費が使える。
しかし日本でも十分な研究費を使えるなら、
世界の先端と勝負できる成果を出せる
のではないか」
と実感したそうです。
https://www.hatsumei.co.jp/column/index.php?a=column_detail&id=179
(発明通信社HPコラム「潮流 (No.70)」(馬場錬成著)より)

つまり、日本の研究現場がアメリカに追いつかないのは、
研究費の違
いだと見抜いたのですね。

たった1人で世界最大手の製薬会社に研究費の交渉

そこで、日本に帰国する際に、
「どうやって研究に使えるお金を引き出すか」
を考え、
製薬会社にお金を出してもらう
ことを思いつきました。

そこで、世界的な大手製薬会社メルク・アンド・カンパニーにコンタクトを取ったんですね。

大村先生は、メルク社に
「研究費をもらう代わりに、新薬につながる化合物を発見して、
特許を取って、使用権を渡す
。メルクがそれで新薬を作る」
新薬が発売されたら、売り上げに応じて我々(北里研究所)に特許料を支払う
ことを提案しました。
なんと、1人で英語の辞書を引きながら、メルクの契約担当者と交渉をまとめたそうです。

ポイントは、「委託研究」と「特許ロイヤルティ」の契約が両立している点で、
この画期的な方法が「大村メソッド」と呼ばれています。

契約を勝ち取れた秘密は?

では、大村先生は、どうやってメルクから契約を勝ち取ることができたのでしょうか?
新薬につながる発見を約束するというのは、
なかなかできることではないですよね。

大村先生が目を向けたのは、
動物用の薬
でした。

人間用は、世界中の研究者が莫大な予算を使って研究しているので、
まともに勝負したら勝ち目がありません
動物用は競合が少ない上に、病気から救われたら人間も喜びます

さらに、「動物用の薬」が、「人間用の薬」として役立つのではないか?
という仮説も立てました。
これにメルクの担当者も反応し、3年間の共同研究契約が締結されたのです。

狙いが当たり、大成功!

その後、「イベルメクチン」が製品化され、
犬のフィラリア用の薬として用いられたのは、多くの人の知るところです。
メルク社は、動物抗生物質の売上で20年間もトップに君臨しました。

結果として、大村先生の属する北里研究所も、
200億円以上の成功報酬を獲得するに至ったんですね。

また、「人間用の薬」に役立つ仮説も当たり、
「河川盲目症(オンコセルカ症)」という
失明につながる病気を防ぐことができるようになりました。

大企業を動かした3つのポイント

以上より、大村先生と北里研究所は、

研究用のお金があれば、新薬ができると信じていた
企業側がメリットを感じられる契約内容を提案できた
・まずは「動物用の薬」という勝ちやすい場所で実績を作り、
その報酬で、よりマーケットの大きな「人間用の薬」を開発した

ことで、成功したんですね。

成功の確信」「相手のメリットを考える」「勝ち易きに勝つ
この3つのポイントが、
大事なんだと思いました。

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