“他力”の商標戦略「プロダクトプレイスメント」

“他力”の商標戦略「プロダクトプレイスメント」

2017年6月28日

持続可能なブランドコミュニケーションをつくる
「サムライツ™」の弁理士、保屋野です。

昨年、大ヒットした映画「君の名は。」。

私も観たのですが、日本の歴代興行収入ランキングでも第4位と、老若男女問わず幅広い年齢層から人気を集めましたね(歴代1位は「千と千尋の神隠し」、次いで「タイタニック」、「アナと雪の女王」)。

Amazon.com「君の名は。」ページより引用

「君の名は。」で、たびたび目についたのが、作中で「サントリー」の商品が登場しているところ。「南アルプスの天然水」や「プレミアムモルツ」、缶コーヒーの「BOSS」もありました。映画とは別に、「サントリー天然水」と「君の名は。」のコラボCMもあるのですが、映画の中に、商品名をぼかしたりパロディにしたりすることなく、そのまま描写されているのです。(Z会もありましたね。)

サントリーは同映画のスポンサーですが、これも一つのPR手法で、「プロダクトプレイスメント」と呼ばれる方法です。映画やTV番組などのコンテンツ内で、実在する製品名やロゴなどの商標を登場させることで、広告を意識させることなく、さりげなく宣伝するやり方です。

もともとハリウッド映画で用いられ始めた方法で、映画内で俳優が使用していた小道具等について、「あれは何ですか?」と問い合わせが来たことから、「宣伝手法として使える」と広まったとのことです。映画等を見てもらうことが大前提なので、宣伝効果はコンテンツ力に依存します。

ただ、あくまでも「さりげなく」登場させるのが大切で、あまり露骨に商標を前面に出してしまうと、宣伝臭がして不評になるだけでなく、映画の世界観も壊してしまう可能性があります。よく、裏でお金をもらいながら、あたかも製品・サービスを褒めているかのように見せることを「ステルスマーケティング(ステマ)」と言いますが、バレてしまった時のマイナスイメージは怖いです。わざとらしくなく、でも確実に見てもらう。このあたりのバランス感覚がとても大事なのですね。

個人的に、今後はYouTubeなんかでも用いられるのではないかな?と思います。登録者数や視聴回数の多いユーチューバーのチャンネルでは、たびたび企業の製品が登場しています。これは”タイアップ案件(企業案件)”と呼ばれて、相応のギャランティが発生しているわけです。

全面的に取り上げられるものもありますが、それとは別に、ちょっと画面に映っているものや、さりげなく使用しているものにも、ひょっとしたら「プロダクトプレイスメント」が用いられているかもしれません。

商標を介在させながら、他の顧客吸引力を利用して、自社製品・サービスの顧客吸引力を高める
自力だけでなく他力をうまく活用することが、これからのマーケティングなのかもしれませんね。