持続可能なブランドコミュニケーションをつくる
「サムライツ™」の弁理士、保屋野です。
ちょっと前のニュースなのですが、
産経の記事が出てまた話題になってました!
商標「直虎」問題。
NHK大河ドラマの主人公、井伊直虎のゆかりの地である
浜松市と浜松商工会議所が、
商標「直虎」を
味噌等の分野で登録した長野県須坂市の業者と、
お菓子等の分野で登録した静岡県浜松市の業者に対し、
登録を取り消すべき旨の申し立て(異議申立)をしました。
(2017.1.29 付の産経ニュースより)
近年の審査の基準では、
“よく知られている”歴史上の人物名は、商標登録できません。
過去にも、「吉田松陰」や「高杉晋作」なんかが、
一度された登録を取り消されたことがあります。
今回の件は、
長野の須坂市には、「井伊直虎」とは無関係の「堀直虎」という歴史上の人物がいて、
没後150年の節目ということで、味噌等の分野について商標出願をして、登録を受けたそうです。
しかし浜松市は、「直虎といえば、井伊直虎でしょ」ということで、
「登録は不当だ!」と主張しているのです。
世間は、
「大河決定までは、井伊直虎は全国的にはさほど有名じゃなかった」
「浜松市の主張に無理があるのでは?」
と若干批判の声が多いみたいですね。
また、「直虎」という名前の歴史上の人物は、ほかにもいます。
「直虎」ってだけで、
特定の”よく知られている”歴史上の人物名であるとはいえないから、
登録を受けたんでしょうね。
一方、
ドラマの制作発表が平成27年8月で、
出願が平成27年12月、
審査結果が平成28年4月なので、
大河で「直虎」が始まるってことはわかっていたと思います。
このあたりの時系列の判断がどうなるか?
気になるところです。
ちなみに、もっと前の平成26年11月に、別の須坂市の酒造会社が、
お酒の分野で「直虎/なおとら」を商標登録されています。
この会社に対しては、なんの申し立てもしていません。
さて浜松市はどうすればよかったのでしょうか?
一番は、どこよりも早く出願すること。
制作発表をしたら、注目を浴びるのは当たり前なので、
その前に主要な分野(飲食料品関係等)を押さえておくことが重要です。
では先に出願or登録されているのを見つけてしまったら?
私だったら、相手の権利に引っかからない使用態様を考えるか、
それが無理なら、相手の権利内容に応じた対応策をおすすめします。
相手がそれなりに正当な理由で登録されてそうだったら、
やっぱりまずは平和的な解決法ですね。
使用許諾(or 権利譲渡)の交渉がいいと思います。
(例外もあります)
今回も、須坂市の業者は交渉の余地を含ませていますね。
逆に、「PPAP」で注目を集めた、
やたら商標を出願しまくる「ベストライセンス社(上田育弘氏)」のようなところとは、交渉しないことです。
本人は商標の使用をするつもりがないため、高額でふっかけられます。
特許庁も、「こういう業者に対してはあきらめないで」と声明を出しているので、後発でもいいから出願することです。
(ちなみに、ベストライセンス社も後から「直虎」を出願中です(–;)やっぱり。)
最近つくづく思います。
登録の異議申立は誰にでも認められているし、するのは自由だけど、
その情報はネットですぐ拡散するので、
思わぬ批判を受けて、評判を落とす可能性も、
考えないといけないんですね。
基本は和の精神でしょうか。
商標の明るい話題が少ないのは悲しいですが、
どんなニュースでも、いろいろ気づきがありますね。