「マイクロブタカフェ」はNG――説明型ネーミングの落とし穴

「マイクロブタカフェ」はNG――説明型ネーミングの落とし穴

商標は、名前であれば何でも登録できるわけではありません。

とくに注意したいのが、その商品やサービスの内容を、そのまま説明しているだけの名称です。こうした商標は、たとえ一見わかりやすくても、商標としては弱く、登録が認められないことがあります。

今回取り上げるのは、「マイクロブタカフェ」という商標をめぐる事例です。これは、商標登録無効審判の不成立審決に対する取消訴訟で、知財高裁が審決を取り消したものです(令和7(行ケ)10079号)。判決では、「マイクロブタカフェ」は役務の特徴をそのまま表すにすぎず、商標法3条1項3号に該当すると判断されました。

何が争点になったのか

本件商標は、「マイクロブタカフェ」の文字を標準文字で表したものです。指定役務は、第35類「カフェテリアの事業の管理」、第41類「愛玩動物の供覧、動物と触れ合うことを目的とした娯楽施設の提供」でした。

争点は、この商標が商標法3条1項3号に当たるかどうかです。

この規定は、商品やサービスの産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、価格、生産方法、提供方法など、内容や特徴を普通に表示するだけの商標は登録できない、という考え方に関わるものです。

要するに、みんなが普通に使いたい説明的な言葉を、特定の一社だけが独占するのは適切ではない、ということです。

審決では「必ずしも説明的ではない」とされた

もともとの審決では、「マイクロブタ」という言葉が、登録査定時点において広く一般に認識されていたとまではいえない、と見られていました。

そして、「マイクロブタ」は「ミニブタ」の数多くあるニックネームの一つにすぎず、それに「カフェ」を組み合わせた「マイクロブタカフェ」という商標も、必ずしも指定役務の質や内容を表示するものではない、と判断しました(無効2024-890045号)。つまり、説明的な名称とまではいえないとして、無効審判請求を不成立としていたわけです。

知財高裁は結論を変えた

これに対して、知財高裁は別の見方をしました。

裁判所は、登録査定時である令和2年5月8日の時点で、「マイクロブタ」はすでに「ミニブタ」よりさらに小さい“超小型の豚”を意味する語として一般に認識されていたと判断したのです(令和7(行ケ)10079号)。

その理由として、判決では次のような事情が挙げられています。

  • 2008年頃から、イギリスなどでマイクロブタがペットとして販売されるようになっていたこと
  • 遅くとも平成24年頃には、イギリスでマイクロブタが人気であることが日本でも紹介されていたこと
  • 平成27年頃以降、日本でもペットとして注目されるようになっていたこと
  • 平成30年以降、特徴や飼育の様子を紹介する記事や動画が相当数投稿されていたこと
  • その過程で、「マイクロブタ」は普通の豚ともミニブタとも区別される存在として扱われていたこと

こうした事情を踏まえ、裁判所は「マイクロブタ」が単なるあいまいな愛称ではなく、一定の意味を持つ語として一般に認識されていたと認定しました。

「マイクロブタカフェ」は何を意味すると見られたのか

さらに裁判所は、「カフェ」という言葉についても、登録査定時にはすでに、さまざまな動物の名称を冠した、特定の動物と触れ合える喫茶店が存在していたことを認めました。

そのうえで、「マイクロブタカフェ」は、需要者や取引者から見れば、“超小型の豚であるマイクロブタと触れ合うことのできる喫茶店”という意味に理解されると判断しました。

つまり、この名称はブランド名というより、提供されるサービスの内容や方法をそのまま説明しているにすぎない、ということです。

なぜ登録を認めるべきでないのか

裁判所は、「マイクロブタカフェ」という表示は、役務の態様、提供の方法その他の特徴を、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるとしました。

そして、このような表示は、その分野で事業を行う人であれば誰でも使いたいはずの、必要で適切な表現であるため、特定人だけに独占させるのは公益上適当ではないと述べています。あわせて、一般的に使用される標章であり、多くの場合、自他役務識別力も欠くと判断しました。

このあたりは、商標法3条1項3号の考え方がそのまま出ている部分です。

わかりやすい名前であることと、商標として登録できることは、必ずしも同じではありません。むしろ、あまりにわかりやすくサービス内容を表してしまうと、商標としては登録しにくくなります。

この事例から学べること

この事例が示しているのは、サービスの特徴をそのまま説明した名前は、後から独占しようとしても難しいということです。

たとえば、

  • どんな動物と触れ合えるのか
  • どんな方法でサービスが提供されるのか
  • 何をする場所なのか

といった情報が、そのまま名称に入っている場合、それは利用者にとってわかりやすい反面、商標としては説明的すぎる可能性があります。

事業を始めるときは、どうしても「ひと目で内容が伝わる名前」を選びたくなります。もちろん、それ自体はマーケティング上は自然な発想です。

ただ、商標の観点から見ると、説明的な名前は権利化しにくく、仮に登録されても後から争われるリスクがあります。今回のように、いったん審決では維持されても、訴訟で結論が覆ることもあります。

名前は「説明」より「識別」で考える

商標で大切なのは、その名前がサービス内容を説明するための言葉なのか、それとも自分のサービスを他と区別するための名前なのか、という点です。

前者に寄りすぎると、商標としては弱くなります。後者として機能する名前、つまり少しひねりがあり、説明そのものではない名前のほうが、長くブランドとして育てやすいことが多いです。

これは、スタート時には少し遠回りに見えるかもしれません。ですが、後から商標で守れるかどうかを考えると、最初のネーミング段階での差はかなり大きくなります。

まとめ

「マイクロブタカフェ」の事例では、知財高裁は、登録査定時点で「マイクロブタ」が“超小型の豚”を意味する語として一般に認識されており、「マイクロブタカフェ」も“マイクロブタと触れ合える喫茶店”という役務の特徴をそのまま表す表示だと判断しました。その結果、本件商標は商標法3条1項3号に該当するとされ、審決は取り消されました。

わかりやすい名前は、必ずしも強い商標ではありません。サービス内容を説明する名前ほど、みんなが使いたい言葉になりやすく、独占は認められにくいからです。

事業名やサービス名を決めるときは、「伝わりやすさ」だけでなく、「商標として守れるか」という視点も早い段階で持っておくことが大切です。

サービス名や店舗名は、あとから変えるのが大変です。説明的すぎて登録しにくい名前になっていないか、今のうちに確認しておきたい場合は、サムライツ知財事務所に相談してみてください。ネーミングと商標の両面から、無理のない形で整理できます。