「ちゃんと商標登録したのに、まさか自分が侵害側になるなんて…」
商標の相談で、ときどき一番ヒヤッとするのがこのパターンです。
その代表例としてよく知られているのが、いわゆる「ゆうメール」事件です(平成22年(ワ)10785号)。
日本郵便側も「ゆうメール」を商標登録していたのに、東京地裁が“使用中止(差止)”を命じたことで話題になりました。
何が起きた?
- 原告:札幌市のDM発送会社(札幌メールサービス)
- 「ゆうメール」を、第35類の役務(例:各戸に対する広告物の配布 等)で商標登録(登録第4781631号)
- 被告:郵便事業株式会社(当時。現 日本郵便)
- 旧「冊子小包」を「ゆうメール」に改称して配送サービスを展開
- 被告側も「ゆうメール」を別の指定(第39類の配送系)で登録していた
そして2012年1月12日、東京地裁はDM・カタログ等の広告物を配達する場面での「ゆうメール」表示の使用中止を命じました(平成22年(ワ)10785号)。
なぜ?「区分が違うからセーフ」が崩れた理由
ここがこの事件の核心です。
商標は、出願時に「指定商品・役務」を選びます。
そのため「区分が違う」「類似群コードが違う」などを見ると、ついこう思いがちです。
「同じ名前でも、別分野で登録できたんだから問題ないはず」
でも裁判所が見たのは、登録上のラベル(区分)ではなく、実際に提供しているサービスの“中身”でした。
日本郵便側は「自分たちの事業は運送・郵便であって、広告物の配布ではない」と主張しましたが、裁判所は、広告物の配送に利用することを宣伝しているなどの事情も踏まえ、少なくとも原告の役務と類似関係にある、と判断しています。
この事件が怖いポイント:「登録の仕方」ではなく「使い方」で侵害になる
「ゆうメール」事件の教訓を一言で言うと、こうです。

登録は取れても、実際の使用態様(サービスの実態)が他人の指定商品・役務とぶつかれば、侵害(差止)になり得る、ということです
つまり、商標は「登録できたら安心」ではありません。
“どう使うか”まで含めて設計しないと、後から地雷を踏むことがあります。
よくある落とし穴
この事件と同じ構造は、実務でも繰り返し出ます。
- 商品は第○類、役務は第△類で登録したから安全だと思った
- でも実際には、販売・貸与・小売・配送・周辺サービスなどが絡み合っていて
- 需要者から見れば「同じ会社のサービス」に見える
- 結果として、商品・役務の類似が認定される
「類似群コードが違う」「区分が違う」は、確かに重要な目安です。
ただし、最後は 取引の実情 と 需要者の混同 が判断を左右します。
最後に:迷う段階で相談しておくと、いちばん安く済みます
商標でいちばん高くつくのは、出願費用ではなく、
- 使い続けたい名称を止められる(差止リスク)
- 名称変更・周知のやり直し
- 和解金・買取(結局「買う」ことになる)
といった事業側の損失です。
「ゆうメール」も最終的には和解で商標権の買取が報じられています(詳細は非公表)。
「この指定で本当に足りる?」「将来の使い方までカバーできる?」「逆に侵害にならない?」
この判断が難しいときは、迷う段階で全体設計を点検したほうが、手戻りが減ります。
サムライツ®︎知財事務所では、商標の類否判断だけでなく、
実際のビジネスの使い方を踏まえて 「通しやすい設計」と「通らなかった場合の打ち手」 まで整理します。
気になる段階で、無理のない形でご相談ください。
