飲食店の商標出願でまず押さえるべき結論はシンプルです。
- お店としてのサービス(店内飲食・テイクアウト等)を守りたい → 基本は 第43類(飲食物の提供)
- そこから、何をどこまで事業化するかで、必要な区分を足していくのが実務的です。
目次
1. まず“王道”:第43類(飲食物の提供)
飲食店の「店名(屋号)」「ロゴ」を、飲食店として守るなら中心はここです。
- レストラン、カフェ、居酒屋、ラーメン店、バー等の飲食サービス
- 店舗の看板・メニュー・Webで使うお店のブランド名(ハウスマーク)
迷ったら、まず第43類を外すことはほぼありません。
2. “やってること別”に足す区分の考え方
よくある追加パターン早見表
| やっていること / 守りたい対象 | 検討する区分 | 例 |
|---|---|---|
| 物販(EC/店頭)に力を入れる(食品・グッズを“売るサービス”として守る) | 第35類(小売・卸売) | 「食品の小売又は卸売に関する業務」等 |
| レトルト・冷凍・瓶詰・スイーツ等を商品化(“モノ”のブランドを守る) | 第29類,第30類,第31類,第32類,第33類 など | 冷凍食品・加工食品(29,30)、飲料(32)、アルコール(32,33)等 |
| 料理教室・イベント・セミナー | 第41類 | 料理教室、セミナー運営等 |
| フランチャイズ/店舗運営ノウハウ提供(コンサル寄り) | 第35類(経営指導等) | 経営の助言、事業の管理 等 |
| アプリ・予約システム名をブランド化 | 第9類,第42類 など | アプリ(9)、SaaS提供(42)等 |
| テイクアウト・デリバリーも強い(他社の配送まで自社で「配達サービス」としてやる) | 第39類(運送・配達系) | 「飲食物の配送」等(※提供は第43類) |
※どの区分でも、効力は「区分」ではなく 指定商品・指定役務で決まります。
3. 典型的な“おすすめ構成”例
パターンA:店舗運営が中心(王道)
- 第43類:飲食物の提供
パターンB:店舗+フランチャイズで拡大
- 第43類:飲食物の提供
- 第35類:経営に関する助言、事業の管理等
パターンC:通販・物販(自家製ソース、冷凍餃子等)も本格展開
- 第43類:飲食物の提供
- 第35類:食品等の小売又は卸売に関する業務
- 第29類,第30類,第32類,第33類等:商品(モノ)そのもの
(例:ソース、冷凍品、菓子、飲料、酒類…など実態に合わせて)
4. よくある誤解と注意点
誤解①:飲食店なら「第43類だけ」で全部守れる
最低限はカバーできますが、物販(第35類+商品区分)や配達(第39類)まで事業の柱なら、43類だけだと守り切れないことがあります。
誤解②:区分を取れば“その区分全部”を独占できる
商標は指定商品・指定役務が命です。
同じ第43類でも、指定役務の書き方で“守りやすさ/使い勝手”が変わります。
誤解③:取りすぎが正義
区分・指定を広げるほど、費用だけでなく不使用取消リスク(使っていない指定が狙われる)が増えます。
「いまやっている/近いうちにやる」を基準に“現実的に”設計するのが安全です。
5. 自分で決めるためのチェックリスト
- この名前(店名・ロゴ・看板メニュー名)をどこに使う?
- 店舗(飲食の提供)→ 第43類
- 物販の“売り場ブランド” → 第35類
- 商品そのもの → 第29,30,32,33類等
- 教室・講座 → 第41類
- 配達代行サービス → 第39類
- 将来やりたい展開は?(FC、物販、通販、教室…)
→ 先に“ブランドの席取り”が必要か判断。
まとめ
飲食店の商標区分は、まずはこの「型」で考えるのが一番ラクです。
- 店として守る:第43類(飲食物の提供)
- 物販(小売サービス)も守る:第35類
- 商品(モノ)も守る:第29,30,32,33類等(中身に応じて)
- 教室・イベント:第41類
- 配達代行サービスも守る:第39類
