整体・鍼灸・マッサージ業界の商標出願ではどの区分を選べばいいですか?

整体・鍼灸・マッサージ業界の商標出願ではどの区分を選べばいいですか?

整体院や鍼灸院、リラクゼーションサロンを運営していると、
こんなモヤモヤが出てきやすいと思います。

  • 「うちの院名・サロン名を商標登録したいんだけど、何類を選べばいいの?」
  • 「施術もするし、スクールもやってるし、物販もしてる……全部同じ区分でいいの?」
  • 「“とりあえず第44類”って聞いたけど、本当にそれで足りるの?」

結論から言うと:

  • 施術サービス → 第44類
  • 整体・鍼灸・マッサージのスクール・講座 → 第41類
  • 店舗やECでの物販サービス(小売) → 第35類
  • 鍼・施術機器・ベッドなど“モノ”のブランド → 多くは 第10類 ほか

という整理で考えると、かなりスッキリします。

この記事では、

  • まず「この業界でよく使う区分」をざっくり整理し、
  • そのあと「業態別のおすすめ組み合わせ」、
  • 最後に「よくある誤解と注意点」

まで、一気にまとめていきます。


1.まず押さえたい“王様区分”:第44類(施術サービス)

整体・鍼灸・マッサージ業の 本体 にあたるのは、
お客様に対して行う 施術サービス ですよね。

この「施術サービス」は、商標上は 第44類 に入ります。

第44類に入りやすいサービスの例

  • 整体
  • カイロプラクティック
  • あん摩マッサージ指圧
  • はり・きゅうによる施術
  • リラクゼーションマッサージ
  • オイルマッサージ、ボディケア
  • 美容ボディケア、リンパドレナージュ
  • 接骨・整骨、骨格矯正 など

院名・サロン名・ロゴをまず守りたい という場合は、

「第44類 + 整体・鍼灸・マッサージなどの施術サービス」

で出願するのが、ほぼ必須ラインだと考えてOKです。


2.業態別:「うちの場合はどの区分?」早見表

よくあるパターンをざっくり整理すると…

やっていること主な区分指定する内容のイメージ
整体・鍼灸・マッサージの施術第44類整体,カイロプラクティック,あん摩マッサージ指圧,はりきゅう,マッサージ 等
セラピスト養成スクール・講座第41類整体・ボディケア・鍼灸等の技術に関するセミナーの企画・運営,教育・講習 等
サロン名で健康グッズやコスメを販売(店舗・EC)第35類健康食品,サプリメント,化粧品,マッサージ器具等の小売又は卸売に関する業務
鍼・施術機器・治療ベッド等のブランド第10類 ほか鍼,鍼灸器具,電気治療器,マッサージ機器 等(扱うモノによる)

この中で どんな業態でもほぼ必ず関わるのが第44類
そこに、事業内容に応じて 第41類・第35類・第10類 を足していくイメージです。


3.整体・鍼灸・マッサージ院の「典型パターン」

① いわゆる「街の整体院・鍼灸院・サロン」

目的:
院名・サロン名・ロゴを守りたい

おすすめ構成:

  • 必須:第44類
  • 整体
  • カイロプラクティック
  • あん摩マッサージ指圧
  • はり治療,きゅう治療
  • リラクゼーションマッサージ
  • ボディケア,もみほぐし 等

物販はほぼおまけ程度/たまに売るだけ なら、
まずは第44類だけでも最低限のカバーはできます。


② 物販もしっかりやっているサロン(コスメ・サプリ・グッズ)

サロン名のブランドで、

  • 化粧品(ボディクリーム,オイル,入浴剤 など)
  • サプリメント・健康食品
  • マッサージグッズ,ストレッチポール 等

をしっかり販売している場合は、

「モノ」+「売るサービス」 の両方を考える必要が出てきます。

1)モノそのものの区分

  • 化粧品 → 第3類
  • サプリメント・健康食品 → 内容・位置づけによって
    • 第5類(栄養補助食品・医薬部外品寄り)
    • 第29類・第30類(食品寄り)など
  • マッサージ器 → 多くは 第10類(医療用機器)ほか

2)販売サービスとしての区分(小売)

  • 第35類
  • 化粧品の小売又は卸売に関する業務
  • サプリメントの小売又は卸売に関する業務
  • マッサージ器具の小売又は卸売に関する業務
    など

よくある構成:

  • サロン名(施術ブランド) → 第44類
  • 同じサロン名で物販サービスも展開 → 第35類 も追加

こうしておくと、

「施術の看板」も「物販ブランド」も同じ名前でしっかり守れる

状態に近づきます。


③ スクール・講座もやっている(教える側)

  • 整体・ボディケア技術スクール
  • 鍼灸・東洋医学セミナー
  • オンライン講座・会員制コミュニティ など

“施術する”だけでなく、“教える”事業も大きい 場合は、

第41類(教育・セミナー) が重要になります。

第41類のイメージ

  • 整体・マッサージ等に関するセミナーの企画・運営
  • セラピスト養成スクールの運営
  • オンライン講座の提供 など

よくある組み合わせ:

  • サロン名(施術ブランド) → 第44類
  • スクール名(講座ブランド) → 第41類

同じ名前でサロンもスクールも展開するなら、

第44類 + 第41類 の両方を取る

という考え方もアリです。


④ オリジナル器具・治療ベッドなどを売りたい

自分の院で開発した

  • 鍼(はり)
  • 電気治療器・温熱機器
  • マッサージ機器
  • 治療ベッド・チェア など

“モノとしてのブランド” を守る場合は、

  • 機器そのもの → 多くは 第10類(医療機械器具)
  • その機器を販売するサービス → 第35類(小売・卸売)

を中心に検討することになります。

さらに、

  • 機器名をそのまま施術メニュー名にも使う
    → 第44類も足すかどうか検討

といった形で、
ひとつのブランドが複数区分にまたがることもよくあります。


4.よくある誤解と注意ポイント

誤解①:「整体なんだから、とりあえず第44類だけ取っておけば全部守れる」

半分正解/半分NG です。

  • 「施術サービスとしてのブランド」を守るだけなら
    → 第44類だけでも最低限はカバーできます。
  • でも、
    • スクールもやっている
    • 物販もブランドの柱になっている
    • オリジナル器具も展開している という場合は、

第44類 + 第41類/第35類/第10類…
といった“複数区分”で考えた方が、将来の展開に対応しやすい

というイメージです。


誤解②:「区分さえ取れば、その区分にあるもの全部を独占できる」

商標の効力が及ぶのは、

「区分そのもの」ではなく、
出願時に記載した 「指定商品・指定役務」 の範囲

です。

たとえば第44類を取っていても、

  • 「整体」だけ指定した場合と
  • 「整体,ボディケア美容,健康に関する助言」まで指定した場合とでは、

守れる範囲が違います。

逆に、あまりに広げすぎると

  • 実際にはやっていない役務について
    「3年以上使っていない」と判断され、不使用取消のリスク

も出てくるので、

「実際にやっている/近いうちにやる予定のサービス」をベースに、“現実的な広さ”で指定する

のがポイントです。


誤解③:「区分は多ければ多いほど安心」

もちろん、多くの区分で登録しておけば、
守備範囲は広がります。

ただしそのぶん、

  • 出願・登録時の費用が増える
  • 更新費用も区分数に比例して増える
  • 各区分ごとに「使っていないと取消」のリスクが増える

というデメリットもついてきます。

整体・鍼灸・マッサージ業界であれば、

  • 第44類(施術)
  • +必要に応じて 第41類/第35類/第10類/第3類/第5類 等を足す

くらいが、現実的でバランスのよい落としどころになることが多いです。


5.自分で整理するときの簡単チェックリスト

「うちの院名、この区分で足りてる?」と考えるときは、
次の 3 ステップでざっくり棚卸ししてみてください。

Step 1:やっていることを書き出す

  • 整体・ボディケア
  • 鍼灸
  • あん摩マッサージ指圧
  • リラクゼーション
  • スクール・講座
  • オリジナル器具の開発・販売
  • 化粧品・サプリの販売
  • オンライン講座・会員制サイト など

Step 2:「サービス」と「モノ」に分ける

  • サービス
    → 第44類(施術)/第41類(教育)/第35類(小売) など
  • モノ
    → 第10類(医療機械器具)/第3類(化粧品)/第5類 等

Step 3:この“名前”をどこに付けているか?を確認

  • 屋号・サロン名 → 第44類(+第35類)
  • スクール名 → 第41類
  • 器具やオリジナル商品のブランド → 第10類・第3類・第5類 など
  • ECサイト名・オンラインサービス名 → 内容によって第35類/第41類/第44類

こうしてみると、

「このブランド名は第44類と第41類で押さえておいた方がよさそう」
「物販はまだ小規模だから、今は第35類まで取らなくてもいいかも」

といった“自分なりの答え”が見えてきやすくなります。


まとめ:整体・鍼灸・マッサージ業界の区分選びの「型」

最後にもう一度、ポイントだけギュッとまとめると──

  • 施術そのもののブランド(院名・サロン名・ロゴ)
    → 基本は 第44類
  • 整体・鍼灸・ボディケアのスクール・講座・オンライン講座
    第41類
  • サロン名のブランドでコスメ・サプリ・健康グッズを販売
    → 「売るサービス」は 第35類
    (+商品そのものは第3類/第5類/第10類など)
  • オリジナル鍼・施術機器・ベッドなどのブランド
    → 多くは 第10類(+必要に応じて第35類・第44類など)

そしていちばん大事なのは、

「何を守りたいのか?」
「この名前を、どんなサービスや商品に使っているのか?」

を先に整理してから、区分を選ぶことです。

区分を選ぶ作業は、
単なる事務的なチェックボックスではなく、

自分の院・サロンのビジネスモデルとブランドの“設計図”を描くこと

でもあります。

いまの事業と、これからやりたいことを一度紙に書き出して、
それに合った区分を選んでみてください。
それだけでも、商標出願が「よくわからない手続き」から、
少し「自分のブランド戦略の一部」に近づいてくるはずです。