サプリメントの商標登録はどの区分を選べばよいですか?──「モノ」「売り方」「作り方」で分けて考える

サプリメントの商標登録はどの区分を選べばよいですか?──「モノ」「売り方」「作り方」で分けて考える

サプリブランドを立ち上げたり、OEMで自社ブランドを作ったりしていると、

  • 「とりあえずサプリだから第5類でいいのかな?」
  • 「ドリンクタイプは?グミやゼリータイプは?」
  • 「ECショップ名も守りたいけど、それも第5類でいいの?」
  • 「OEM工場としてのブランド名は、第何類で出せばいいんだろう?」

みたいに、区分選びで軽く迷子になりがちです。

結論だけ先にまとめると、ざっくりこんなイメージです。

  • 人用サプリそのもの → 第5類
  • 健康ドリンクっぽいもの → 第32類も検討
  • “サプリを売るサービス”(EC・小売・通販) → 第35類
  • 栄養指導・ダイエットカウンセリングなど → 第44類
  • 受託によるサプリメントの製造・加工 → 第40類

「サプリ=第5類」だけで終わらせず、
“中身のモノ”“売り方のサービス”“作るサービス”を分けて考える
と、かなりスッキリします。


1. まず大前提:「サプリ=健康食品」と区分は別の話

よく混ざりがちなのが、

  • サプリが 薬機法上「健康食品」扱いか、「医薬品・医薬部外品」扱いか
  • 商標の 区分(第何類)」はどれか

この2つは、まったく別のルールで動いています。

  • 薬機法上の区分
  • 医薬品
  • 医薬部外品
  • 健康食品 …など

と、

  • 商標法上の区分(第○類)
  • 第5類:サプリ・医薬品 等
  • 第32類:清涼飲料 等
  • 第35類:小売・卸売サービス
  • 第40類:サプリの受託製造 等
  • 第44類:栄養指導・健康相談 等

は、直接リンクしているわけではありません

なので、

「うちのサプリ、薬機法上は“健康食品”だから第29類か30類でしょ?」

とは限らず、
商標実務では “サプリメント” は基本的に第5類で扱われます。


2. 人用サプリメントの基本:まずは第5類

カプセル・錠剤・粉末・顆粒・タブレットなど、
いわゆる 「栄養補助食品」「サプリメント」 として売っているものは、
原則として 第5類 に分類されます。

第5類に入りやすいサプリのイメージ

  • ビタミン・ミネラルサプリ
  • コラーゲン・ヒアルロン酸サプリ
  • 乳酸菌・ビフィズス菌サプリ
  • 美容系サプリ(肌・髪・爪など)
  • ダイエットサポートサプリ
  • 睡眠・リラックスサポートサプリ など

ブランド名・シリーズ名・商品名 を守りたいなら、
まずは 第5類 を候補にするのが基本です。


3. ドリンク・グミ・ゼリータイプは?(第5類+第32類/29・30類)

最近は、タブレットだけでなく、

  • ドリンクタイプのサプリ
  • ゼリー飲料・ショットドリンク
  • グミ・キャンディ型のサプリ

など、形態が多様になっています。

ここでのポイントは、

実際の見せ方・売り方が「飲料/お菓子」に近いか、「サプリ」に近いか

です。

健康ドリンク系

  • 「機能性表示食品」としての健康ドリンク
  • 「栄養ドリンク」「エナジードリンク」っぽく売っているもの

などは、

  • 第5類(サプリメント側)
  • 第32類(清涼飲料・栄養ドリンク)

併願を検討 することが多いです。

グミ・ゼリー・バータイプ

  • 「サプリグミ」「プロテインバー」など

“お菓子寄りの見せ方”で売っているかどうかによって、

  • 第5類(サプリメント)
  • + 必要に応じて第29類・第30類(食品)

を検討する、という発想になります。

※どの食品類に入るかは、実際の商品ごとに違うので
J-PlatPatや類似商品・役務審査基準で近い商品例を確認するのがおすすめです。


4. サプリの「販売サービス」は第35類

ここが意外と見落とされやすいところです。

  • 自社ECでサプリを販売している
  • サプリ専門の通販サイト・セレクトショップを運営している
  • サブスクリプション型で毎月サプリを届けるサービスをしている

といった場合、
サイト名・ショップ名・サービス名 は「サプリそのもの」ではなく、
“サプリを売るサービス” に対する商標になります。

この場合は 第35類 の出番です。

第35類で指定するイメージ

  • 「サプリメントの小売又は卸売に関する業務」
  • 「インターネットを利用したサプリメントの小売又は卸売に関する業務」
  • 「健康食品の小売又は卸売に関する業務」

など。

製品名(第5類) とは別に、

  • ECサイト名
  • ショップブランド名
  • ドラッグストア・通販会社の屋号

を守りたいなら、第35類をセットで検討しておくと安心です。


5. 栄養指導・ダイエット指導などは第44類

サプリの販売だけでなく、

  • 管理栄養士による栄養指導
  • パーソナル栄養カウンセリング
  • サプリ+食事指導+運動指導のトータルサービス
  • クリニック併設のダイエットプログラム

などを行っている場合、
サービスとしての「指導」「カウンセリング」は、第44類が関わります。

第44類で想定される役務

  • 「栄養に関する指導」
  • 「栄養に関するコンサルティング」
  • 「ダイエットに関するアドバイス」
  • 「医療に関する情報の提供」

など。

たとえば、

「○○メソッド(サプリ+栄養指導+運動指導のプログラム)」

をブランドとして育てたい場合は、

  • サプリの名前 → 第5類
  • プログラム名(栄養指導サービス) → 第44類
  • オンライン講座や講演 → 第41類
    (※教育・セミナーとして扱う場合)

といった形で、
複数区分にまたがることも珍しくありません。


6. OEM・受託製造ブランドを守りたい場合は第40類

サプリ業界では、

  • サプリの自社ブランドを持つ「メーカー側」
  • 他社ブランドのサプリを作る「OEM・受託製造側」

が分かれていることも多いです。

後者、つまり “受託によるサプリメントの製造サービス” は、
第40類 に属します。

第40類が関係するケース

  • サプリのOEM・ODM(受託製造・受託開発)を行っている工場
  • CMO/CDMOとして、原料加工やカプセル化・顆粒化などを請け負う会社
  • 「◯◯ラボ」「△△ファクトリー」など、製造サービス自体のブランドを育てたい場合

こういった場合、

  • 受託製造サービスのブランド名
  • 製造プラットフォーム名

などを守るためには、
第40類「受託によるサプリメントの製造」 を指定して商標出願するのが適切です。

第5類と第40類の違いイメージ

  • 第5類:出来上がった「サプリそのもの」の商品名・ブランド名
  • 第40類:他社のサプリを「製造してあげるサービス」やそのメーカーの名称

なので、

  • 自社ブランドのサプリ名 → 第5類
  • OEM受託工場としての屋号・サービス名 → 第40類

というように、役割に応じて区分を分けるのがポイントです。


7. ペット用サプリの場合は?

ペット向けサプリも人気ですが、
こちらも基本の考え方は同じです。

  • 動物用サプリメント → 第5類
  • 一般的なペットフード・おやつ → 第31類 など

サプリとしての位置づけが強い商品なら、
人用と同じく第5類で検討するのが基本ラインです。


8. よくある勘違いと注意ポイント

勘違い① 「サプリ=健康食品 ⇒ 食品類(29・30類)でしょ?」

商標区分上は「サプリメント」は第5類が基本です。
食品としての側面が強い形態(ドリンク、グミ、バー)であっても、

  • サプリとして打ち出しているのか
  • 単なるお菓子・飲料として売っているのか

で判断が分かれます。

勘違い② 「第5類さえ取っておけば、サプリ関連は全部守れる」

商標の効力は、「区分」ではなく 指定商品・役務 の範囲で決まります。

  • 第5類で 何を指定したか
  • 第35類で「どんな小売サービス」を指定したか
  • 第40類で「どんな製造サービス」を指定したか
  • 第44類で「どんな指導サービス」を指定したか

で保護範囲が決まるので、
事業実態に合わせた指定がとても大事です。

勘違い③ 「区分を多く取れば取るほど安心」

区分を増やすと、

  • 出願・登録費用が増える
  • 更新費用も増える
  • 使っていない区分・指定商品は「不使用取消」のリスクが高まる

というデメリットもあります。

「今やっていること」「近い将来確実にやること」に絞って、
必要な区分だけを戦略的に選ぶのがベターです。


9. ざっくり整理:サプリビジネスで出てきやすい区分

何を守りたい?主な区分具体例のイメージ
サプリそのものの名前(商品名)第5類ビタミン・ミネラルサプリ、美容サプリ、ダイエットサプリなど
サプリのドリンク/ショット飲料第5類+第32類 検討サプリドリンク、機能性飲料など
サプリグミ・バーなど第5類+(29・30類 検討)サプリグミ、プロテインバーなど
サプリ専門ECサイト名・ショップ名第35類「◯◯サプリオンライン」「△△ヘルスストア」など
サプリのOEM・受託製造サービスのブランド名第40類「◯◯ラボ」「△△ファクトリー」など製造サービスブランド
栄養指導・ダイエットカウンセリング名第44類○○メソッド(栄養指導サービス)
ペット用サプリ第5類犬猫用サプリメント

10. 迷ったら、「どのビジネスにこの名前を貼っているか?」から逆算する

区分選びで迷ったときは、
先に区分を見に行くのではなく、

  1. その名前をどこに付けているか?
    • サプリ本体?
    • ECサイト?
    • 栄養指導サービス?
    • OEM製造サービス?
    • プログラム全体?
  2. そのビジネスの中身は「モノ」か「サービス」か?
    • モノ → 第5類(+29・30・32類)など
    • 売るサービス → 第35類
    • 作るサービス → 第40類
    • 指導・カウンセリング → 第44類

の順で整理すると、
必要な区分がかなり見えやすくなります。


サプリの世界は、
中身の設計(処方)も、見せ方(ブランド)も、作り方(製造体制)も、継続性(信頼)もすべて大事なビジネスです。

商標はその中で、

  • 商品名・ブランド名を守る(第5類)
  • 小売サービスやプログラム名を整理する(第35類・第44類)
  • OEM・受託製造のブランドを押さえる(第40類)

ためのツールです。

「サプリ=第5類」で終わらせず、
あなたのブランドがどんな広がり方をするのかをイメージしながら、
ムリのない範囲で区分を組み立ててみてください。