店舗やスクール、ブランドを運営していると、
「登録したロゴの色や配置を少し変えたい」「新しいデザインにリニューアルしたい」
という場面がよくあります。
しかし、商標登録したロゴを勝手に変更して使うと、
変更の内容によっては“登録商標の使用”と認められない場合があります。
この記事では、商標登録したロゴを少し変えて使うときの注意点と、
「どこまでならOKか」「変更したらどう対応すべきか」を解説します。
目次
結論:軽微な変更なら「社会通念上同一」として使用と認められる
商標登録の効力は、原則として「登録されたデザインそのもの」に及びます。
ただし、実際の使用形態が登録商標と社会通念上同一であると認められる場合には、
登録商標の使用とみなされる(商標法第50条第1項)とされています。
したがって、次のような軽微な変更であれば、
通常は登録商標の使用に含まれると判断されます。
社会通念上同一とみなされる主な例
| 変更の内容 | 扱い | 備考 |
|---|---|---|
| 色や配色を変更した(例:白黒ロゴをカラーで使用) | 使用と認められる | デザイン全体の印象が変わらない範囲 |
| フォントや文字の太さを調整 | 使用と認められる | 字形が大きく異ならない場合 |
| 英字表記とカタカナ表記とひらがな表記を相互に入れ替え(例:「YAMADA」↔「ヤマダ」) | 使用と認められることが多い | 同じ称呼・観念であれば同一と判断されることが多い(ただし、例外もあるので注意) |
| 配置や大きさを微調整 | 使用と認められることが多い | 要素の位置を少し調整した程度 |
| 図形の線や装飾をわずかに変える | 使用と認められることが多い | 全体の印象が変わらない範囲 |
※社会通念上同一と認められた例:
- 取消2022-300716
- 登録商標「
」 - 使用商標「
」
- 登録商標「
- 取消2022-300786
- 登録商標「
」 - 使用商標「
」
- 登録商標「
社会通念上同一と認められない例
一方で、以下のようにデザインや構成を変更した場合には、
「別商標」と判断されるおそれがあります。
つまり、後述の「不使用取消審判」により、登録が取り消される可能性があります。
| 変更の内容 | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| ブランド名の一部を追加・削除した(例:「LUNA」→「LUNA TOKYO」) | 非同一 | 新しい語が追加され、印象が変わる |
| 図形要素を変更・差し替えた | 非同一 | 視覚的印象が異なる |
| フォントや構成を大幅に変えた | 非同一 | 商標の識別力が変化 |
| 新しいデザイン要素等を追加 | 非同一 | 別商標として扱われる可能性 |
※社会通念上同一と認められなかった例:
- 取消2021-300282
- 登録商標「清正」
- 使用商標「
」「
」
- 取消2019-300761
- 登録商標「Blue Cross」
- 使用商標「
」
商標法上の根拠:第50条(不使用取消審判)
商標法第50条では次のように規定されています。
「正当な理由なく3年以上日本国内で使用していない登録商標」は、
他人の請求により、その登録を取り消される。
ここでいう「使用」には、
登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用も含まれます。
つまり、軽微な変更であれば、登録商標の使用として有効です。
ただし、変更が大きい場合は「別商標」と判断され、
使用していない扱いとなるおそれがあります。
※参考記事:「使われていない商標を取り消す!不使用取消審判の手順を弁理士が解説」
https://samuraitz.com/weblog/trademark/5290/
※参考記事:「商標を使っていないと危ない?不使用取消審判の仕組みと防衛策」
https://samuraitz.com/weblog/trademark/4614/
実務での対応ポイント
① 軽微な変更ならそのまま使用可能
色やフォントなど印象を変えない範囲の変更であれば、
登録商標の使用として認められる可能性が高いです。
ただし、変更前後の比較で判断が微妙な場合は、弁理士に確認するのが確実です。
② ロゴ全体をリニューアルする場合は再出願を検討
デザインの印象が明確に変わる場合は、
新しいロゴを別商標として出願するのが安全です。
旧ロゴもブランド認知が残る間は併用・維持するのが理想です。
③ 旧商標の維持管理を忘れずに
ロゴを変更しても旧ロゴをまったく使わなくなると、
3年以上で「不使用取消審判」により権利を失う可能性があります。
一部で使用を続ける、または更新・放棄の判断を計画的に行いましょう。
よくある誤解と正しい理解
| 誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 色やフォントを変えたら別商標扱いになる | 軽微な変更なら「社会通念上同一」として使用と認められる |
| 英字とカタカナを入れ替えると別扱い | 同じ称呼・観念なら同一と判断される場合が多い |
| 登録商標を少し変えて使えば自動的に保護される | 変更の程度によっては別商標扱いになる |
| ロゴをリニューアルしたら旧登録は不要 | 旧商標の維持・管理も重要(不使用取消リスクあり) |
専門家に相談するメリット
弁理士に相談すれば、
- ロゴ変更が「社会通念上同一」にあたるかの法的判断
- 新ロゴの出願戦略(併願・再出願の要否)
- 不使用取消を防ぐための使用・管理アドバイス
- 旧ロゴとの併用・移行時期の設計
といった専門的なサポートを受けることができます。
まとめ
商標登録したロゴを少し変えて使う場合──
- 軽微な変更(色・フォント・英字/カタカナの入れ替えなど)は「社会通念上同一」として使用と認められる
- デザインの印象が変わる大きな変更は「別商標」と扱われる
- 新ロゴを使うなら、新たに出願するのが確実
- 旧商標も一定期間は維持し、不使用取消を防ぐ
商標は「使い方次第で守れるか失うか」が決まります。
デザインを変える前に、専門家と一緒に変更の範囲とリスクを確認しておきましょう。


