メニュー名を商標登録することは可能?飲食店・サロン・クリニックでのブランド活用ポイント

メニュー名を商標登録することは可能?飲食店・サロン・クリニックでのブランド活用ポイント

飲食店や美容サロン、講座ビジネスなどで人気のメニューができると、
このメニュー名を商標登録して守りたい」「他店に真似されたくない」「使えなくなるのを防ぎたい」と考える方も多いでしょう。

結論から言えば、メニュー名も商標登録は可能です。
ただし、登録できるかどうかは“その名前に識別力があるかどうか”によって大きく変わります。

この記事では、メニュー名を商標登録する際の判断基準と、実務でのポイントをわかりやすく解説します。


結論:メニュー名も商標登録できるが、「ありふれた名前」は登録できない

商標登録は、「他者の商品やサービスと区別できる名称」であることが条件です。
したがって、メニュー名であっても独自性・創作性のある名前であれば登録(ただし、すでに他人の登録商標が存在する場合を除く)。

一方で、単に内容を説明しているだけのメニュー名(例:「チョコレートケーキ」「整体コース」「姿勢改善ストレッチ」など)は、
識別力がないとして登録できません(商標法第3条第1項第3号)。


登録できるメニュー名・できないメニュー名の違い

登録の可否名称の例理由
登録できる可能性が高い「幸せのパフェ」「ブレインヘルスケア・コース「立体アロマブレンド」独自の表現・造語で識別力がある
登録が難しい「塩バスクチーズケーキ」「肌管理パーソナライズコース」「ピラティス整体」内容を説明しているだけで識別力がない

つまり、「その言葉を見てどこの店のサービスかわかるか」が判断基準です。
創作性のあるネーミングをしていれば、メニュー名でも十分に商標登録の対象になります。

なお、文字のみでは識別力がない商標でも、識別力ある文字やロゴなどを加えれば登録できる場合があります。

例えば、文字商標「高槻ブレンド」(商願2022-016609)は、地名と「ブレンド」の文字の組み合わせからなり、識別力なしとして審査で拒絶されましたが、
ロゴと「WESTFIELD」の文字を加えた「」(登録第6602571号)は、全体で識別力があるため商標登録されました。


飲食店・サロン・講座ごとの実務的な出願例

業種商標登録されたメニュー名の例出願すべき主な区分(指定商品・役務)
飲食店・「フラペチーノ」(登録第4612716号他)
・「ハッピーセット」(登録第4106521号他)
・「飲めるハンバーグ」(登録第5815669号)
第43類(飲食物の提供等)
美容サロン・エステ・「心身温活コース」(登録第6567643号)
・「女神リフト」(登録第6943667号)
・「ドクタートリートメント」(登録第6752495号)
第44類(美容等)
医院・クリニック・整体院・鍼灸院・「TAKARA式MAF療法」(登録第6959108号)
・「インダイレクト・ハイブリッド矯正」(登録第6637365号)
・「再生治療整体」(登録第6964209号)
第44類(医業・歯科医業・整体・鍼灸等)

※商標の効力は、「登録した指定商品・役務の範囲」で発生します。
同じ名称でも、非類似の業種(例:飲食と美容)では併存登録されることがあります。


登録によって得られるメリット

1. 他店の模倣・便乗を防げる

人気メニュー名を登録しておけば、他の店舗が同名のサービスを使うのを防止できます。
特にSNSや口コミサイトで話題になったメニューは、早めの登録が安全です。

2. ブランド化・差別化につながる

ユニークなメニュー名を登録しておくと、「このお店ならでは」のブランドを構築できます。
商標登録済みのメニューは、広告・メニュー表・看板で「®」マークを付けて信頼感を訴求できます。

3. 商品展開・ライセンス化が可能になる

人気メニューを登録しておけば、他店舗へのライセンス提供コラボ商品展開など、
新たな収益モデルに発展させることも可能です。
(例:「〇〇カレー®」を他店に提供、「△△スムージー®」をパッケージ商品化 など)


登録を目指すときの実務ポイント

1. まずは商標検索で重複を確認

特許庁のデータベース「J-PlatPat」で、同じまたは似た名前の登録がないかを確認しましょう。
既に他人が登録している場合、同一・類似の範囲では出願できません。

2. 識別力が弱い場合はロゴ化して出願

文字商標として識別力がない場合でも、ロゴや書体・デザインを加えることで登録できるケースがあります。
たとえば、「プレミアム〇〇」の文字は難しくても、ロゴ+装飾で全体として登録可能になる場合があります(ただし、この場合はあくまでもロゴ等を含めた全体で登録されたのであって、同じ文字からなる識別力のない文字商標に対しては、権利を主張できない場合がある点に注意です)。

3. 出願区分を正しく選ぶ

メニューの種類(飲食・美容・医業など)によって指定すべき区分が異なります。
指定商品・役務を誤ると、保護範囲が実際のビジネスに合わなくなるため、専門家に確認するのが安全です。


よくある誤解と正しい理解

誤解正しい理解
「メニュー名は登録できない」独自性があれば登録可能。説明的な名前は不可。
「実際に使っていないと出願できない」将来使う予定があれば出願可能。使用予定でもOK。
「登録すれば全分野で独占できる」効力は登録した指定商品・役務の範囲に限られる。
「ロゴで出せば文字も守れる」ロゴ登録では文字単独の権利は得られない。可能なら文字も別途出願が必要。

専門家に相談するメリット

弁理士に相談すれば、

  • 類似メニュー名の事前調査
  • 識別力の有無・登録可能性の判断
  • 適切な指定商品・役務の選定
  • 出願・登録手続きの代行
  • 登録後のブランド活用アドバイス

といった実務対応を一括でサポートしてもらえます。


まとめ

メニュー名も、独自性のあるネーミングであれば商標登録が可能です。

  • 登録できるのは「識別力のある創作的な名前」
  • 効力は登録した指定商品・役務の範囲に限定される
  • ロゴ化・造語化によって登録可能性を高められる
  • 早めの出願が模倣防止とブランド保護につながる

人気メニューを「一時の話題」で終わらせず、長く愛されるブランドに育てたいなら、
商標登録で確実に保護しておくことが大切です。