自分が運営する講座やセミナーが人気になるにつれ、「元受講生が講座名を名乗って活動している」「独自講座として同じ名前を使われている」といった相談が増えています。
特に講師業やオンラインスクールの分野では、ブランド名や講座名の模倣トラブルが起こりやすいのが現状です。
では、受講生が勝手に講座名を使った場合、どのように対処すべきなのでしょうか。
結論:まずは商標権・契約の有無を確認し、冷静に対応を
結論から言えば、講座名を無断で使われた際の対応は「法的権利の有無」によって変わります。
商標登録をしている(商標権がある)場合は、正式な権利に基づいて使用停止を求めることが可能です。
一方、商標登録をしていない場合でも、契約や信義則に基づいて一定の対応ができるケースもあります。重要なのは、感情的に反応するのではなく、権利関係を整理した上で適切に行動することです。
商標権がある場合の対応
講座名を商標登録している場合、その名称を無断で使う行為は商標権侵害に該当する可能性があります。
この場合、次のような手順で対応するのが一般的です。
- 証拠を確保する:相手のウェブサイト、SNS投稿、チラシなど、使用の事実を記録。
- 内容証明郵便で警告する:商標権者として正式に「使用をやめるように」通知。
- 改善がない場合は法的措置を検討:弁護士を通じて損害賠償や差止請求を行うことも可能です。
商標登録をしておけば、このように「明確な権利者」として主張がしやすく、トラブルを未然に防ぐ抑止力にもなります。
ただし、相手の行為が、こちらが商標登録した指定商品・役務の範囲に含まれていない場合は、「商標権がない」のと同じである点に注意が必要です。
商標権がない場合の対応
商標権がなくても、次のような方法で一定の対応を取れる可能性があります。
- 受講契約や利用規約で禁止を明記している場合
「講座名や教材を無断使用しないこと」といった条項がある場合、契約違反として注意・警告が可能な場合があります。ただし、その違反行為により実際にどのような損害が発生しているのかを証明する必要があり、なかなか難しいことが多いです。 - 不正競争防止法による保護
需要者に広く知られている講座名を模倣し、混同を引き起こしている場合は「他人の業務に係る商品等表示と混同を生じさせる行為」として対応できるケースもあります。ただし、「需要者に広く知られている」ことや「混同が生じるおそれがある」ことを証明するハードルが高いです。 - 信義則・倫理的観点からの指導
法的措置までは取らない場合でも、「主催者のブランドを尊重してほしい」という趣旨で穏やかに注意することも有効です。ただし、基本的には”お願いベース“になってしまうので、相手が従わない場合に強制することができません。
商標権がないという法的根拠が弱い状態で強い表現を使うと、逆にトラブルを拡大させるリスクもあるため注意が必要です。
よくある誤解
「自分が最初に使い始めたのだから自動的に権利がある」と思われがちですが、これは誤解です。
商標権は出願・登録を経て初めて保護される権利であり、使用実績だけでは法的に守られません。
また、「講座名に自分の名前を入れているから大丈夫」と考える方もいますが、他者が似た名称を使えば混同が起こる可能性があります。
実務での防止策
トラブルを防ぐためには、次のような事前対策を講じることが効果的です。
- 講座名の商標登録を行う
特に長期的に展開する講座名は早めに出願しておくことで、将来的な権利トラブルを防げます。 - 受講規約に「名称・教材の無断使用禁止」を明記する
契約で明示しておけば、万一の際に根拠として示せます。 - 商標表示(™や®)を併記する
ブランド保護の意識を示し、模倣を防ぐ抑止効果があります。
専門家ができるサポート
弁理士や弁護士に相談することで、
- 講座名の商標登録の可否調査
- 契約書や利用規約の見直し
- 無断使用への適切な対応文書の作成
といった支援を受けることができます。特に感情的なトラブルは、第三者の専門家を介して冷静に解決するのが得策です。
まとめ
受講生が講座名を勝手に使っている場合、まずは商標権や契約の有無を確認し、法的根拠に基づいて対応することが重要です。商標登録を行っていれば強い権利行使が可能ですが、未登録でも契約や倫理的な観点から注意喚起することはできます。
再発防止のためにも、講座名を自分の大切なブランドとして守る意識を持ち、専門家と連携して対策を講じましょう。