キングジムが「テプラPRO」類似ロゴ使用のエレコムらを提訴

キングジムが「テプラPRO」類似ロゴ使用のエレコムらを提訴

2018年1月20日

「サムライツ®」の弁理士、保屋野です。

「キングファイル」や「テプラ」で有名な文具メーカーのキングジムが、
カラークリエーションとエレコム(以下、エレコム側)に対して、
ラベルライターのブランド「テプラPRO」に類似した商標を無断使用して、商品を製造販売したことを理由に、
商標権侵害で提訴したようです(ITmediaニュースより)。

「テプラPRO」は、キングジムの登録商標で、何件か登録されています。

(登録第5045621号)

一方、エレコム側で使用しているのがこちら

「エレコムダイレクトショップ楽天市場店」より引用

確かに、表面的に見たら、そっくりですよね!
きっと多くの人が、
「これはアウトだろ…」
「似すぎw」
「エレコム側が悪い!」
のように思うかと思います。

ところが、商標はそんなに単純ではないのです。

商標が似てる似てないの話ではなく、
そもそも商標の使用に該当するのかどうか?
という話に発展する可能性があるのです。

どういうことかといいますと、
エレコム側は「TEPRA PRO」の横に「互換」と表示しています。
つまりこれって、
純正じゃないですよ
サードパーティー品ですよ
ということを示しているのです。

ということは、エレコム側は、
我々の(エレコム側)の商品ブランドですよ
という意味で「TEPRA PRO」を使っているのではなく、
我々の商品の適合機種は「TEPRA PRO」ですよ
という説明的な意味で使っているのです。
これは、商標の使用には当たりませんから、
商標権侵害に該当しないと判断される可能性があるのです。

これに近い判断が下された事例で、
「ブラザー事件」があります(平成16年(ネ)第3751号)。

Faxを製造販売し、「ブラザー」「brother」等の商標権を有していた原告ブラザー社が、Fax用のインクリボンの外箱に「ブラザー用」「For brother」と表示していた被告を、商標権侵害で訴えた事件です。
結論として、「ブラザー用」「For brother」といった表示は、
“ブラザー社製造のFaxに使用できるインクリボン”であることを示すための表記にすぎず、商標権侵害が認められなかったのです。

今回の場合は、文字よりも目を引く「ロゴ」を使用した件ですし、
“互換”という言葉も多少曖昧さを含むので、同じ判断となるかわかりません。
(”キングジム用”の表記もありますが、ここを突っ込んでしまうとブラザー事件と同じですね)
ただし考え方としては同じで、エレコム側の使い方が、
商標としての使用」なのか、はたまた「商品の説明としての使用」なのか、
で判断が分かれることでしょう。

プリンターは、本体で儲けるよりもインクで儲ける、
いわゆる「消耗品モデル」と言われるビジネスモデルが主流です。
プリンター本体を使う上で必ず必要となる、純正インクを繰り返し買ってもらうことで、
長期的な利益を得るわけです。
本件のラベルプリンターも同様ですし、最近はカプセル式コーヒーの「ネスプレッソ」なんかもそうですね。

もしその消耗品の部分に特許を持っていれば、
他者が同じ技術を使うことができず、同じ効果を出すことが難しくなるために、
参入障壁ができて、より高くより多く儲けられる可能性があります。

しかし特許がないとしたら、どうしても、
似たような互換品を安い値段で売るサードパーティーが出てきてしまいます。
「安けりゃいい」と思ってる消費者はそちらを選びますから、
大変な機会損失です。

今回のキングジムによる提訴も、
なんとかそのような自体を食い止めたい!
という強い思いの現れかもしれませんね。

今後の裁判の行方に注目です。