商標権は、ブランドの象徴であるだけでなく、金融取引において担保として活用できる資産でもあります。
特に、ベンチャー企業や知財集約型ビジネスでは、商標権を担保に資金調達を行うことは有効な手段です。
本記事では、商標権を担保に融資を受ける2つの方法と実務上のポイントを解説します。
商標権を担保にする2つの方法
1. 質権の設定
商標権を担保にする最も代表的な方法は、質権の設定です。
- 質権設定契約の締結:債務者(商標権者)と債権者(金融機関など)が質権設定契約を結びます。
- 特許庁への質権設定登録申請:商標法34条4項および特許法98条1項3号に基づき、登録を行うことで効力が発生します。
登録されると、債務不履行時には債権者が商標権を換価して債権回収に充てることが可能となります。
なお、契約で別段の定めをした場合を除き、質権者は商標を使用することができません(商標法34条1項)。
2. 譲渡担保の設定
もう一つの方法が、譲渡担保です。商標法に規定があるわけではありませんが、実務上認められています。
- 名義移転:担保権者に商標権の名義を移しますが、契約で定めれば従来通り商標を使用することができます。
- 特許庁への移転登録申請:特許庁にて移転登録を行うことで、効力が発生します。
この方法は、金融機関側にとって担保価値の確保が明確になる一方、債務者にとっては名義移転に伴う心理的・事業的な影響もあります。
契約で定めた期間内に債務者が債務を弁済した場合は、債権者は商標権を債務者に返還することになります。
実務上のポイント
方法 | 法的要件 | 利点 | 注意点 |
---|---|---|---|
質権 | 登録が効力発生要件 | 商標権を保持したまま担保提供可能 | 商標管理に支障がないよう契約条件を明確化 |
譲渡担保 | 登録が効力発生要件 | 担保権者にとって権利確保が容易 | 名義移転による心理的・事業的影響 |
さらに、担保価値を高めるためには以下を整理しておくことが重要です。
- 商標の周知性やブランド力
- 使用実績や売上貢献度
- 将来のライセンス収入見込み
これらの情報は、金融機関が担保評価を行う際の判断材料となります。
まとめ
- 商標権を担保にする方法には、質権設定と譲渡担保設定があります。
- どちらの場合も、特許庁への登録が効力発生要件です。
- 担保価値を高めるためには、ブランドの市場価値や活用計画を明確にしておく必要があります。
弊所では、担保設定契約の作成、特許庁手続、金融機関との調整までワンストップでサポート可能です。
商標権を活用した資金調達をご検討の方は、ぜひご相談ください。