はじめに
今回取り上げるのは、こちらのニュース。
・「「ポッキー」立体商標認められる 江崎グリコ、1966年発売」(共同通信)
https://www.47news.jp/12966951.html
チョコ菓子の定番「ポッキー」のこの形が、特許庁により正式に立体商標として登録されました(登録第6951539号)。登録日は2025年7月25日。商品の形そのものが商標として保護されるのはハードルが高く、このニュースは、デザインや形状を活かす中小企業にとっても大きな示唆を与えてくれます。
「立体商標って何?」の詳細は別記事で
立体商標の仕組みについては、以前のこちらの記事で詳しく解説しています。
ここではその概略として、「形状そのものに識別力があると認められた場合に、商標として保護されるもの」とだけ押さえておきましょう。
実は一度、拒絶されていた
今回、晴れて登録が認められたポッキーの立体商標ですが、実は江崎グリコが2023年に出願した際に、審査で拒絶されています(商願2023-104043)。理由は、商品の形状を立体的に表したに過ぎず、識別力が不十分と判断されたためです。その時は、出願を取り下げることで一度は権利化を断念しました。
その取り下げを行った出願では、「菓子(肉・魚・果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),洋菓子」といった広めの商品を指定していましたが、その後新たにした出願では、指定商品を「チョコレート菓子」に絞り込み、使用実績を示す膨大な証拠資料を提出することで、ようやく登録が認められたという経緯があります。
つまり、「チョコレート菓子」の中では、この形状が“ポッキーである”と世間に十分認識されている──それを証明できたからこその登録です。
中小企業には立体商標より、まず意匠登録
このように、商品の形状自体を立体商標として登録するには、相当な知名度と長年の使用実績が求められます。
したがって、中小企業にとっては現実的にはハードルが高いのが実情です。まず目指すべきは「意匠登録」によってデザイン(形状)を権利化すること。
意匠権は新規性があれば登録可能で、模倣からの予防的保護が可能になります。そして、長期間にわたって同じ形状を使い続け、消費者の間に認知が広がった段階で、立体商標登録を検討する──この順序が実践的です。
「見た目だけで伝わる」仕組みを作れるか?
ポッキーの事例は、商品に「文字がなくても伝わる認識力」を持たせることの強さを教えてくれます。
これは中小企業にとっても目指すべき方向です。どんなに小さな製品でも、「この形=あの会社」という記憶をお客様に持ってもらえたら、それは最大のブランド資産です。
形状をブランディングに活かし、模倣される前に守る。これこそが、これからの知財戦略の基本です。
まとめ
ポッキーの立体商標登録は、大企業だからできた話……ではありません。
私たち中小企業にとっても、「守れるものを見逃さない視点」と「商標・意匠という制度の段階的な活用力」が求められます。
まずは、自社の商品やサービスに「この形、他にはないな」と思える要素があるかをチェックしてみましょう。そこから、あなたのブランドを“形”で守る第一歩が始まります。