キャラクター画像は商標出願すべきか?著作権だけで十分かを弁理士が解説

キャラクター画像は商標出願すべきか?著作権だけで十分かを弁理士が解説

企業やクリエイターが制作したオリジナルキャラクターを保護する際、「著作権があるから商標出願は不要」と考えるケースは少なくありません。しかし、実際には商標登録も検討すべき理由が複数存在します。

この記事では、著作権と商標権の違いを明確にしながら、キャラクター画像を商標登録すべきかの判断ポイントを弁理士の視点から解説します。


1. 著作権と商標権の違い

項目著作権商標権
保護対象表現(創作性のあるイラスト等)商品・サービスの出所を示す標識
登録の要否不要(創作と同時に発生)必要(特許庁への出願・審査が必要)
保護期間原則:著作者の死後70年登録後10年(更新可・半永久的)
侵害判断類似性・依拠性等の有無使用態様・類似範囲による判断

2. キャラクター画像における著作権の限界

  • 著作権は創作と同時に発生する無方式主義制度であるため、「著作物性を主張しなければならない」という制約が存在し、これが著作権保護の限界になり得る
  • 第三者が偶然似たキャラを作っても、依拠性(既存のイラストを参考にすること)がなければ著作権侵害とは言えないケースが多く、模倣防止には不十分な場合もある
  • 無断使用があっても損害賠償額が低額にとどまりがちという実務上の課題がある

3. 商標登録の有効性と利点

  • キャラ画像をロゴや商品パッケージ、広告などに使用する場合は、「商標」としての利用に該当しうる
  • 商標登録しておけば、差止請求・損害賠償請求が比較的容易に可能
  • 「登録商標」の表記ができ、権利主張を明確化できる
  • 模倣や悪意の商標出願対策としての予防効果が大きい
  • 更新により半永久的に権利を保持できる(詳細は後述)

4. 商標登録すべき判断ポイント

以下のいずれかに該当する場合、商標出願を検討すべきです

  • キャラ画像を商品・サービスの「顔」として使う予定がある
  • コラボ商品ライセンス契約を視野に入れている
  • キャラクターグッズ、パッケージ、宣伝素材に使用している
  • 将来的にマーチャンダイジング(商品化展開)を考えている

5. 著作権が切れても商標権が残るケース

著作権は原則として「著作者の死後70年」で消滅しますが、商標権は登録更新により半永久的に存続可能なため、著作権が切れた後も商標権によりキャラクターが保護されている例があります。

有名な事例:

  • ピーターラビット
    • 原作者のビアトリクス・ポター氏が1943年に亡くなり、50年+戦時加算の10年5ヶ月後の2004年以前に日本での著作権が消滅しました(当時の日本の著作権法では、創作者の死後50年で権利消滅)。
      しかし、ピーターラビットのイラストの数々は商標登録されている(登録第4588974号他)ため、指定商品・役務について商標としての無断使用はできません

このように、商標権の取得・維持はキャラクターの長期的なブランド戦略として極めて有効です。長期的な知的財産戦略として、著作権と商標権の併用を検討しましょう。


6. 実務上の注意点

  • 具体的には図形商標キャラクター名称またはキャラクター名称+図形の複合商標での出願が考えられる
  • 複数のポーズや表情バリエーションがある場合、主要なものだけでも出願しておくと効果的
  • 他社商標と類似する場合、審査で拒絶されることもあるため事前調査が必須

7. まとめ

キャラクター画像は、著作権で保護される一方で、商標権による保護が極めて有効なケースが多く存在します。
特に商用利用・ブランド化・ライセンス展開を意図する場合は、商標登録によって防御力が飛躍的に高まります。

「うちのキャラは著作権だけで十分」と思わずに、早期に弁理士と連携して出願戦略を立てることを強くおすすめします。