地域ブランドや特産品を守り、地域活性化を実現する!「地域団体商標」とは?

地域ブランドや特産品を守り、地域活性化を実現する!「地域団体商標」とは?

地域ブランドや特産品を守る手段として、「地域団体商標制度」が注目されています。地域名+商品名による文字商標について、一般商標とは異なる緩やかな登録要件が認められる制度です。


制度の概要と目的

地域の産品・サービスの信頼を維持し、地域経済を活性化させるための制度です。地域名と商品(サービス)名の組合せによる文字商標について、通常は識別力不足で登録できないところ、一定の条件を満たせば商標登録が可能となります。


1. 登録要件(商標法7条の2第1項)

① 主体要件

以下いずれかの法人であること。複数共同出願の場合、全員が該当する必要があります:

  • 事業協同組合等(法人格あり・加入自由の規定必須)
  • 商工会・商工会議所
  • 特定非営利活動法人(NPO法人)
  • これらに相当する外国の法人

② 使用主体要件

商標は構成員(団体の会員)に使用させるものでなければなりません。団体自身が使用することも問題ありませんが、構成員の使用が前提となります。

③ 周知性(緩和された要件)

全国的な認知ではなく、「一定範囲の需要者」に対して広く認識されていることが求められます(流通経路・商品やサービスの種類等に応じた評価)。

④ 文字構成要件

  • 「地域の名称」+「商品・役務の普通名称または慣用名称」+必要に応じて「産地表示慣用語」
  • 外国語・図形・ロゴは不可。文字のみで、“普通に用いられる方法で表示された”構成である必要があります。

⑤ 地域名と商品・役務の密接な関連性

商標に含まれる地域名称は、商品の生産地やサービス提供地など、商品・役務との密接な関連性が認められなければなりません。


2. 団体商標との違い

  • 団体商標は一般社団法人や事業協同組合などが構成員に使用させる商標制度であり(商標法7条)
  • 地域団体商標はその一形態で地域ブランド保護に特化した制度(商標法7条の2)
    通常の団体商標より要件が拡充されていますが、地域名+商品名という文字構成である点が特徴です

3. 利点と制限

✓ メリット

  • 差止請求・損害賠償請求など、通常の商標権と同様の法的効力が得られます
  • 登録で地域ブランドの信用力が向上、法人や構成員への信頼性アップにもつながります
  • 地元産品・地域ブランドの統一性を守りつつ、品質管理規約と併せて模倣品や偽装流通を抑止します
  • 観光振興、地域産業プロモーション、フェア認証などに活用しやすいです

× 制限事項

  • 地域団体商標の商標権は、譲渡できません(商標法24条の2第4項)
    • 一方、合併や相続など一般承継による移転は認められています
  • さらに、専用使用権の設定も認められません。使用は構成員の自由利用に委ねられます
  • 出願前から継続して商標を使用している者には先使用権が成立し、第三者が引き続き使用可能な場合があります

4. 実務上のポイント

  • 登録対象組合等であることを証明する書面」と「商品・役務の密接な関連性がある地域名であることを証明する書類」の提出が必要(商標法7条の2第4項)
  • 地域との密接関連性を示す証拠書類の例:
    • 新聞、雑誌、書籍などの記事
    • 公的機関などの証明書
    • パンフレット、カタログ、内部規則
    • 納入伝票、注文伝票などの各種伝票類
  • 周知性の証明資料(流通実態、販売経路、取扱店舗数など)は重要
    • 「周知性不足」を理由とした拒絶が多い
    • 証拠資料不足による拒絶にならないよう、適切な証拠の蓄積・収集に努める
  • 出願後に団体トップや構成員の変更があると、要件に影響する可能性があるため注意

5. 登録例

権利者地域団体商標例登録番号
市川市農業協同組合市川のなし登録第5066922
沖縄生麺協同組合沖縄そば登録第5008493
特定非営利活動法人北本市観光協会北本トマトカレー登録第5870183
二宮町商工会湘南オリーブオイル登録第6793189
高岡仏具卸業協同組合高岡仏具登録第5098480
水上温泉旅館協同組合水上温泉登録第6857123
一宮商工会議所一宮モーニング登録第5825571
保津川遊船企業組合保津川下り登録第5497779
横浜中華街発展会協同組合横濱中華街登録第5069264

まとめ

地域団体商標(商標法7条の2)は、地域名+商品・サービス名の文字だけで構成される特殊な商標制度です。地域ブランドの保護と、構成員による使用統制を両立する制度設計が特徴。出願には主体性・使用実態・認知性・文字構成の要件をすべて満たす必要があり、専門的対応が鍵となります。地方団体ブランドを守る戦略的制度として、弁理士による早期段階からの設計・資料準備を強くおすすめします。