2025年参院選「名簿届出政党」16党の出願・登録状況をチェック
本日は参院選2025の投票日。各党の選挙活動も昨日で終わり、あとは投開票を待つばかりとなりました。
さて選挙戦といえば、街中に掲げられる政党名やロゴは「先取商標」や便乗グッズの温床になりがちです。
意外かもしれませんが、政党名でも商標登録自体は可能(※先後願・公益性等の審査あり)です。商標登録をして安全に政党名を使用できるようにすることが、支援者に対する信頼の証ともいえますね。
そこで、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)での2025年7月18日時点での検索結果をまとめました。
政党名 | 党名の出願・登録状況 (主要登録番号) | 全商標出願・登録件数 | 備考 |
---|---|---|---|
日本保守党 | あり:第6534102号ほか | 31件 | 「保守党」の文字、ロゴも登録 |
自由民主党 | あり:第6534102号ほか | 22件 | 「自民党」や「自民」の文字、ロゴ、広報キャラとその名前「じみたん」も登録 |
国民民主党 | あり:第6133050号ほか | 20件 | 「国民党」や「国民民主」の文字、広報キャラとその名前「こくみんうさぎ」も登録 |
公明党 | あり:第5472169号ほか | 18件 | 「公明」「KOMEI」の文字、ロゴ、広報キャラとその名前「コメ助」も登録 |
立憲民主党 | あり:第6052837号ほか | 8件 | 民主党時代の旧商標「民主党」の文字、ロゴも登録 |
日本維新の会 | あり:第5896379号ほか | 5件 | 「大阪維新の会」の文字、広報キャラとその名前「いしんのしし」も登録 |
参政党 | あり:第6302000号ほか | 2件 | ロゴ商標と併せて、神谷宗幣氏名義で登録 |
れいわ新選組 | あり:第6620413号 | 1件 | |
NHK党(NHKから国民を守る党) | あり:第6235689号 | 1件 | 「NHKから国民を守る党」を立花孝志氏名義で登録 |
日本共産党 | なし | 4件 | 党名そのものは出願歴なし、機関紙「赤旗」のロゴを登録 |
社会民主党 | なし | 検索ヒットなし | |
無所属連合 | なし | 検索ヒットなし | |
日本改革党 | なし | 検索ヒットなし | |
チームみらい | なし | 検索ヒットなし | |
日本誠真会 | 出願中:商願2025-059249 | 1件 | 吉野敏明氏名義で出願 |
再生の道 | 出願中:商願2025-004963 | 1件 | 石丸伸二氏名義で出願 |
政権与党が多いのはもちろんのこと、意外に多かったのが、日本保守党(全31件)と国民民主党(全20件)。特に保守党は2023年結党である点を考えると特異な存在です。一方で、100年以上の歴史があり党員も25万人以上いると言われている日本共産党や、55年体制で野党第一党だった社会民主党(旧日本社会党)が0件であることも意外でした。保守寄りの政党の方が権利に対しても保守的(権利保護に積極的)なのでしょうか?
登録されない政党名
- 既存の党名と類似の商標は、4条1項6号・8号違反の可能性
- 「こどもの党」という商標が出願されるも、すでに他者により結党され存在していたため、「他人の名称と同一の文字を表してなり、かつその他人の承諾を得ていない」として、4条1項6号・8号違反で拒絶されました(商願2022-148364号)。
- 著名な党名と類似の商標は、出願時には存在してなくても4条1項6号・7号違反の可能性
- ドクター中松氏が商標「日本維新の会」を出願。出願時は「日本維新の会」は存在しなかったものの、すでに「大阪維新の会」を立ち上げていた橋下徹氏らにより後に結党。その結果、審査で4条1項7号の「公序良俗違反」と判断され拒絶されました。
- 中松氏側は不服審判を請求しましたが、「公益に関する非営利団体として著名な「日本維新の会」と同一又は類似の商標である」として、4条1項6号の拒絶審決が下されました。
- さらに中松氏側はこの審決に対する取消訴訟を提起したものの、請求は棄却されました(知財高裁平成26(行ケ)10090)。
- 出願後に団体が誕生した場合であってもアウトとなるため、なるべく他者が名づけそうな名前を避けましょう。
- ロゴに国旗などが含まれるとNG
というロゴ商標が出願されましたが、日本の国旗である日章旗と同一又は類似の図形を顕著に有してなるとして、4条1項1号違反で拒絶されました(商願2020-107061)。
- 外国の著名な政党名と紛らわしいとNG
- 「トランスヒューマニスト党」という商標が出願されましたが、実は米国で使用されている著名な政党名でした。従って、「トランスヒューマニスト党」や組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるとして、4条1項15号違反で拒絶されました(商願2019-069861)。
手続フロー
- 先行商標調査(類似党名・公益標章の有無を確認)
- 商品・役務の指定(印刷物・イベント役務等の分野を指定することが多い)
- (必要なら)ロゴ設計
- 出願→出願内容にもよるが、出願から6~8ヶ月くらいで審査結果が通知
- 登録後の権利管理(支部・後援会への使用許諾、更新等)
まとめ
- 近年は商標登録意識の高まりからか、登録済みの政党が増えている。新党は未登録または審査中であることが多い。保守寄りの政党の方が商標出願に積極的に取り組んでいる傾向。
- 既存政党名(公益団体名)は 4条1項6・7号・8号が主な拒絶理由。
- 商標を取りたい場合は他者が使用していない政党名を選択。
選挙シーズンに便乗した第三者の“先取出願”や模倣グッズ対策には、専門弁理士による先行調査と出願戦略の設計が不可欠です。疑問があれば早めにご相談ください。