大阪・関西万博で展示するなら必読!商標法9条1項〈博覧会特例〉を弁理士が解説

大阪・関西万博で展示するなら必読!商標法9条1項〈博覧会特例〉を弁理士が解説

先週木曜日、大阪・関西万博(EXPO 2025 OSAKA, KANSAI, JAPAN)に行ってきました。大阪出張のついでに訪れたので、事前予約ができず、なかなか行きたいパビリオンに行けなかったのですが、キャンセル待ちで一番興味のあった石黒浩さんの「いのちの未来」に参加できたのはラッキーでした。

さて、万博で自社商品を出品したり、自社サービスをブース出展したりする企業は、万博会場で使用したロゴやネーミングを“展示日”までさかのぼって先願扱いにできる“博覧会特例制度”(商標法9条1項)を活用できるのをご存知でしょうか。

ただし、特例を受けるためには展示日から6ヶ月以内の出願展示事実の証明書提出が必須。さらに商標そのものが識別力を欠いていれば登録は認められません。
本記事では条文原文と JPO 審査便覧を基に、要件・手続・実務ポイントをまとめます。


商標法9条1項の概要(博覧会特例)

項目内容
趣旨国際博覧会で展示・提供した商品・役務に使用した商標を、展示日を基準時として6ヶ月以内に出願すれば、展示日に出願したものとみなす(先願利益の確保)。
対象博覧会①政府等が開設する博覧会
②政府等以外の者が開設する博覧会であって、特許庁長官の定める基準に適合するもの
③パリ条約同盟国、WTO加盟国、TLT条約締約国で開催される国際的な博覧会(政府等若しくはその許可を受けた者が開設するもの)
④③に該当しない国で開設される国際的な博覧会であって、特許庁長官の定める基準に適合するもの(政府等若しくはその許可を受けた者が開催するもの)
→大阪・関西万博はおそらく③に該当
適用要件1) 出品者・出展者が出願人
2) 展示日から6ヶ月以内に出願
3) 出願時に「9条適用希望」の書面を同時提出(願書にその旨記載でOK)
4) 展示証明書を出願日から30日以内に提出(延長規定あり)
効果同条の適用を受けた出願については、展示日が出願日とみなされるため、その後の第三者出願や使用を先願として排除できる。

手続フロー

時点手続ポイント
展示・出展日2025年4月13日以降を基準例とする
展示から6ヶ月以内商標登録出願出願書類+〈9条適用希望〉の書面を同時提出(願書に記載でOK)
出願日から30日以内展示証明書提出日本国際博覧会協会発行の証明書や、万博への出品・出展を示すパンフレット等をJPOへ提出
期間延長が必要な場合省令で定める期間+最大6ヶ月の猶予やむを得ない理由がなくなってから14日以内省令で定める期間経過後は“やむを得ない理由”がある場合のみ提出可(商標法9条3〜4項)

実務での注意ポイント

  1. 時間割を逆算
    • 証明書発行には数日~数週かかる。展示日+6ヶ月の出願期限、出願日+30日の証明書提出期限をカレンダーに記入
  2. 識別力は別問題
    • 9条特例で出願日を遡らせても、ロゴが説明的・普通名称であれば商標法3条1項各号で拒絶
    • 「EXPO 2025」など公式標章を含む場合4条1項7号等で拒絶されるおそれ
  3. 海外展開はパリ優先権も検討
    • 万博で公表した商標に新規性要件を設ける国もあり得るため、必要なら基礎出願日から6ヶ月以内にパリ優先権を使って外国出

具体例:タイムラインで見る適用イメージ

日付企業Aの行動9条手続
2025/05/01万博ブースで新ロゴ入り製品を初展示
2025/10/31展示から約6ヶ月JPOへ商標出願+9条特例申請書
2025/11/28出願から28日目展示証明書を提出(期限内)
2026/06頃審査→登録出願日は展示日(2025/05/01)とみなされ、後願を排除

よくある質問

QA
展示日から6ヶ月を1日過ぎたら?特例は受けられません。通常出願として審査されます。
証明書を30日以内に出し忘れたら?経済産業省令で定める期間内なら可能。その後でも、正当理由があれば6ヶ月以内に提出可能(商標法9条3〜4項)。
ロゴを少し変更してから出願したい変更版は展示物と同一商標とみなされず、9条適用外。あらためて通常要件で審査されます。

まとめ

  • 商標法9条1項特例は、万博出品・出展を基準に出願日を遡らせる強力な先願確保策
  • 適用には展示から6ヶ月以内の出願+30日以内の証明書提出が必須
  • 識別力要件(3条)や他の拒絶要件(4条)を満たさないと登録不可

大阪・関西万博で新ブランドを披露予定の企業は、展示スケジュールと出願計画を弁理士と早めに策定し、確実に権利化を進めましょう。