国際登録を取得したあと、追加で国を増やしたい、商品・役務を追加したい ―― そんなときに活躍するのが 「事後指定(Subsequent Designation)」 です。マドプロの利便性を最大化するうえで欠かせないこの制度を、手続きの流れ・費用・実務上の注意点に分けて解説します。
目次
1. 事後指定とは?
- 定義:国際登録が成立した後に、
- 新たな締約国を追加指定 する
- 既指定国の指定商品・役務を追加(ただし、国際登録簿上の商品(役務)の範囲内) する
WIPO への追加手続き
- 根拠:マドリッド協定議定書 規則 24(Rule 24)
2. 事後指定の主なケース
ケース | 具体例 |
---|---|
① 国追加 | 事業拡大で「米国・EU」のみだった国際登録に中国・韓国を追加 |
② 商品・役務追加 | 当初は「第25類:衣類」だけ → 後から 第35類:小売役務 を追加 |
3. 事後指定の手続きフロー
- MM4 フォームを準備(電子提出が推奨)
- WIPOへ直接提出 または JPO経由提出
- WIPO形式審査(不備なければ約1〜2 か月で公報掲載)
- 各指定国で実体審査(新規指定国の場合のみ)
- 期間:通常 12〜18 ヶ月
- 拒絶が来た国だけ現地代理人で応答
4. 費用の目安(2025年)
費用項目 | 金額 |
---|---|
JPO 手数料(経由提出時) | 4,200円 |
(a) WIPO基本手数料 | 653CHF(白黒) / 903CHF(カラー) |
(b) 付加手数料(一指定国ごと) | 100CHF/国 |
(c) 追加手数料(分類数3を超えた場合) | 100CHF/区分数3を超えた1区分ごと |
(d) 個別手数料(b,cの代わりに受領を宣言する国) | 100〜1,000 CHF/国・区分数により変動 |
弁理士手数料(書類作成・電子提出) | 20〜40万円(書類作成・電子出願) |
5. 実務での注意ポイント
① 基礎商標との同一性は維持
- 国を追加してもマーク・指定商品役務は基礎の範囲内。
- マーク変更や商品・役務追加が基礎や国際登録簿上の商品(役務)より広い場合は個別出願が必要。
② 手数料の二重払いに注意
- 基本手数料は 事後指定ごとに発生。
- 国をまとめて追加するほうがコスト効率が高い。
③ 指定国の審査制度を確認
- 使用証拠提出義務(米・メキシコなど)
- 異議申立制度(フィリピンなど)
→ 拒絶リスクが高い国は個別出願で先行取得も検討。
④事後指定の存続期間は国際登録日から10年
- 事後指定日から保護の効果が発生するが、存続期間の満了日は国際登録日から10年なので要注意。
- 事後指定日から10年ではない。
6. 事例で見るタイムライン
時点 | 出来事 | 備考 |
---|---|---|
2025/03/10 | 国際登録(米・EU 指定) | IR No.1234567 |
2026/05/01 | 事後指定:中国・韓国 を追加 | MM4 提出 |
2026/07/15 | WIPO 公報掲載 | – |
2027/01/20 | 韓国から拒絶通報 | 現地代理人で応答 |
2027/08/10 | 中国・韓国とも登録完了 | 更新は米・EUと同時に行う |
まとめ
- 事後指定は国際登録後に国を追加・範囲を調整できる柔軟な制度。
- MM4フォーム+WIPO 手数料で手続き可能だが、国追加には実体審査がある点に注意。
- 拒絶リスクや手数料を踏まえ、国の優先順位づけと個別出願の併用を検討しましょう。
不明点や費用シミュレーションは、マドプロ実務に精通した弁理士へお気軽にご相談ください。