マドリッド協定議定書(マドプロ)で国際登録を取得した後でも、国際登録日から5年以内に日本でした基礎商標出願・登録が拒絶・取消・無効となると、同じ範囲で指定していたすべての締約国分の権利が一括で消えてしまいます。これが セントラルアタック(Central Attack) です。本記事では仕組み・影響・実務上の対策をまとめます。
目次
セントラルアタックの仕組み
5年間の依存関係
- 依存期間:国際登録日から起算して5年間
- 対象:基礎出願/基礎登録と同一範囲の国際指定
- 結果:基礎が拒絶査定 → 査定確定、取消、無効になると、国際登録も自動的に抹消(全指定国まとめて消滅)
典型的な発生パターン
- 基礎出願が審査段階で拒絶査定 → 査定確定
- 基礎登録が不使用取消審判で取消 → 審決確定
- 基礎登録が無効審判で無効 → 審決確定
影響とリスク
- コストロス:国際出願料・各国手数料が無駄になる
- 権利ホール:指定国すべてで保護喪失 → 模倣対策が困難
- 再出願費用:権利回復には個別出願や再国際出願が必要
実務で取るべき3つの対策
1. 基礎商標の登録性を事前に確保
- 先行商標調査・識別力チェックを徹底
- 拒絶理由が出たら意見書・補正で速やかに解消
- 登録後も不使用取消リスクを下げるため、早期に使用開始
2. リスク国は個別出願で先行確保
- 重要市場・模倣多発国はマドプロとは別に個別出願
- 基礎が失効しても個別権利が残り、事業継続に支障が出にくい
3. トランスフォーメーション(救済制度)の把握
- 国際登録が抹消された国について、3ヶ月以内に各国個別出願へ変換可能
- 変換出願は国際登録日に遡及。ただし各国出願料・代理費用が発生
事例で見るタイムライン
時点 | 出来事 | 影響 |
---|---|---|
2025/10/15 | 日本で基礎出願 | ― |
2026/03/10 | マドプロ国際登録(IR No.1234567) | 5年依存スタート |
2026/12/01 | 日本基礎が拒絶査定 → 査定確定 | セントラルアタック発生 |
2027/01/15 | WIPOが各国に抹消通知 | 国際登録取消 |
2027/04/15 | トランスフォーメーション期限(3ヶ月) | 個別出願で救済可 |
まとめ
- セントラルアタックは 国際登録日から5年以内 に基礎商標が失効すると国際登録が連鎖取消。
- 基礎商標の登録性確保、重要国の個別出願、トランスフォーメーション(3ヶ月以内) が主な対策。
- マドプロ出願前に基礎商標を精査し、ハイリスク国は個別に出願をすることで、重ねて保険を掛けることが重要です。疑問点は経験豊富な商標専門弁理士へご相談ください。