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商標出願で「似ている」と判断される仕組みとは?
商標出願をすると、「先に出された商標と似ている」という理由で拒絶されることがあります。
では、その「似ている」はどのように判断されているのでしょうか?
そのカギを握るのが「類似群コード」という仕組みです。
今回は、商標専門弁理士がこの類似群コードについてわかりやすく解説します。
類似群コードとは何か?
類似群コードの定義と付与の目的
類似群コードとは、商品やサービス(役務)を、特許庁が類似性の観点からグループ分けしたコードです。
各商品・役務にはこのコードが付与されており、同じコード同士は原則として「類似」と見なされることが多くなります。
商品・役務の分類とは別の考え方
類似群コードは、国際分類(第1類〜第45類)とは異なる概念で、たとえば同じ第25類に分類される商品でも、類似群コードが異なれば類似しないと判断される可能性があります。
逆に、異なる区分の商品でも、類似群コードが一致すれば「類似」とされる場合もあります。
例えば、指定商品「歯ブラシ」を指定したケースを考えてみましょう。
「歯ブラシ」の分類は「第21類」、類似群コードは「21F01」です。
商品・役務 | 分類 | 類似群コード | 類似の判断 |
---|---|---|---|
つけ爪 | 第3類 | 21F01 | 類似 |
歯ブラシの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 | 第35類 | 21F01 35K02 | 類似 |
電気式歯ブラシ | 第21類 | 11A07 | 非類似 |
「歯ブラシ」と「つけ爪」は、分類は異なりますが、同じ類似群コードなので、商標審査では「類似する」と判断されやすくなります。
「歯ブラシ」と「歯ブラシの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」も、分類は異なりますが、同じ類似群コードなので、商標審査では「類似する」と判断されやすいです。
しかし、「歯ブラシ」と「電気式歯ブラシ」は、分類は同じですが、異なる類似群コードなので、類似とは判断されません。
類似群コードが果たす役割
審査官が類否判断を行う際の基本指標
特許庁の審査官は、商標出願において同じ又は類似の商品・役務が存在しないかをチェックします。この際、類似群コードが最初のスクリーニング指標として使われています。同一又は類似のコードがあると、より詳細な審査が行われます。
出願前のリスク判断にも活用できる
出願前に、自社が使いたい商品・役務の類似群コードを調べておくことで、先行商標と競合するリスクを把握することができます。これは、事前のクリアランスサーチの一環として非常に有効です。
審査で「自己の業務に使用される商標ではない」と判断する材料
商標法第3条第1項柱書では、商標登録を受けるためには、その商標が『自己の業務に係る商品または役務』について使用されることが必要とされています。
つまり、出願人がその商標を自身の業務で使用している、または使用する意思があることが求められます。
しかし、1区分内での商品・役務の指定が広い範囲に及んでいる場合は、「指定商品・役務が広すぎる」ため「商標の使用及び使用の意思があることに疑義がある」と判断され、第3条第1項柱書違反が通知されます。
具体的には、1区分内で23以上の類似群コードにわたる商品・役務を指定している場合に、この拒絶理由が通知されることになります。
よくある誤解と注意点
同じ類似群コード=必ず拒絶ではない?
類似群コードが同じだからといって、必ず拒絶されるとは限りません。あくまで類似と「推定」されるに過ぎないため、実際の審査では類似しないと判断されることもあります。また、読み方や外観など、商標そのものの要素も審査対象です。
逆に、類似群コードが違っていても商品・役務の用途や機能等が似ていると拒絶される可能性もあります。特に、「商品・役務審査基準」の備考欄に記載された商品・役務同士は、「備考類似」として類似が推定されるので注意が必要です。
例えば、上記の「歯ブラシ」を例にすると、分類が「第21類」、類似群コードが「21F01」ですが、「第3類」で「04B01」の「歯磨き」と備考類似の関係にあります。
願書には類似群コードを記載しない理由
出願時に提出する「商標登録願」には、類似群コードを記載しません。これは、類似群コードが内部的な審査資料として使われるためで、出願人側が判断する項目ではないという建前によります。
商標専門弁理士が教える、類似群コードの調べ方と活用法
「商品・役務サポートツール」での検索方法
特許庁が提供する「商品・役務サポートツール(https://tmfast.jpo.go.jp/tmsupport/top.html)」を使えば、任意のキーワードから関連する商品・役務とその類似群コードを簡単に調べることができます。
「類似商品・役務審査基準」の見方と使い方
より専門的に調べたい方は、「類似商品・役務審査基準」(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/ruiji_kijun/index.html)を活用しましょう。多数の商品・役務が例示されており、類似性を判断するための良い材料になってます。弁理士はこれらの情報を基に、より正確な出願戦略を立てています。
まとめと結論
類似群コードは、商標審査における「類似か否か」の判断の第一歩となる非常に重要な仕組みです。出願前に類似群コードを把握しておくことで、拒絶リスクを回避しやすくなります。自己判断が難しい場合は、商標専門弁理士のサポートを活用して、より確実な出願を目指しましょう。
出願前調査と弁理士の活用でリスクを最小限に
弁理士に相談することで、適切な類似群コードの把握だけでなく、審査官の視点に立った出願戦略の構築が可能になります。特に新たなブランドを立ち上げる際は、クリアランス調査を含めた総合的な対応が大切です。