【追悼】「長嶋茂雄」は登録商標だった!弁理士が解説

【追悼】「長嶋茂雄」は登録商標だった!弁理士が解説

「長嶋茂雄」氏の偉大な功績と、名前が商標登録されていたという意外な事実

2025年6月3日、巨人軍終身名誉監督であり「ミスタープロ野球」と称された長嶋茂雄さんが89歳で逝去されました。心よりお悔やみ申し上げます。

読売ジャイアンツ9連覇に貢献し、プロ野球を国民的人気スポーツにした長嶋さん。日本の高度経済成長期の象徴として、スポーツ界にとどまらず日本文化に大きな影響を与えてきましたが、「長嶋茂雄」という名前が、実は登録商標であることをご存じでしたか?

今回はその商標登録の背景や意味を、商標専門弁理士の視点から解説します。

「長嶋茂雄」の商標登録の経緯

登録内容と区分の概要

商標登録されているのは、「長嶋茂雄」の文字商標です(登録第5401366号)。こちらの商標は、「せっけん類,化粧品(第3類)」や「キーホルダー,時計(第14類)」「被服,履物(第25類)」「おもちゃ,人形(第28類)」「菓子及びパン(第30類)」「ビール,清涼飲料(第32類)」「宿泊施設の提供(第43類)」など、非常に多岐にわたる分野で登録されています。

登録者と出願の背景

出願人は株式会社オフィスエヌでとなっていて、長嶋茂雄さんの次女・三奈さんが社長を務める資産管理会社のようですね。

2010年に出願され、2011年に登録されています。公式グッズの展開などを念頭に置いた登録と考えられますが、他者に無断で使われないよう防衛的(ブランド保護)な目的もあると考えられます。

有名人の名前が商標になるケースとは?

氏名の商標登録の法的根拠

商標法では、個人名も一定の条件を満たせば商標登録が可能です。

ただし、同姓同名の他人の氏名を含む場合は、

  • その他人の承諾をもらう
    又は
  • その氏名に一定の知名度を有する他人が存在せずその氏名と相当の関連性があり、かつ不正の目的がない

のどちらかの場合に登録を受けることができます(商標法第4条1項8号)。

また、すでに亡くなった人については、広く知られた名前や歴史上の人物の名前については、無関係の第三者が登録することができない場合が多いです(商標法第4条1項7号)。

「長嶋茂雄」さんの場合は、ご本人のご存命中に関係会社が商標登録しているので問題なしというわけですね。

著名人の名前を商標化する目的とメリット

有名人の名前を商標登録する主な目的は、「第三者による無断使用の防止」と「ブランド保護」です。これにより、タレントグッズや企業とのライセンス契約において、正規性と品質を保つことが可能になります。

ちなみに、長嶋さんと共に一時代を築いた「王貞治」さんも、ご本人名義で商標登録されています(登録第6403594号)し、2013年に長嶋さんと共に国民栄誉賞を受賞した「松井 秀喜」さんも、お父様名義で商標登録されています(登録第4754303号他)。

「長嶋茂雄」の商標登録が意味すること

パブリシティ権と商標の関係

有名人の名前や肖像には「パブリシティ権」が認められていますが、それをより明確に保護する手段として商標登録が活用されます。

パブリシティ権」は、故人には適用されませんし、法律で明記された権利ではないので保護の範囲が曖昧ですが、商標権を取得すれば、法的に強固な独占的使用権を得ることができます。

無断使用を防ぐためのブランド保護手段

商標権があることで、長嶋茂雄氏の名前を無断で商品名や広告に使用した場合、差止請求や損害賠償請求などの法的措置が可能になります。著名人の権利を守る実践的な手段です。

商標専門弁理士が語る、氏名商標登録の注意点

本人の同意の必要性

繰り返しになりますが、いくら自分の氏名であっても、同姓同名の他人が存在する名前を商標登録するには、

  • その他人の承諾をもらう
    又は
  • その氏名に一定の知名度を有する他人が存在せずその氏名と相当の関連性があり、かつ不正の目的がない

ことが必要です。これがない場合、拒絶理由に該当する可能性が高いです。

実務上の審査基準と登録の難易度

氏名の商標登録は、審査官が「著名性」や「使用実態」などを厳しく判断するため、通常の文字商標よりも難易度が高くなります。経験豊富な弁理士によるサポートが重要です。

まとめと結論

「長嶋茂雄」の名前が商標登録されている事実は、多くのファンにとって驚きかもしれません。しかし、これは著名人の権利を保護し、ブランド価値を守る合理的な手段です。商標登録は、スポーツやエンタメの分野においても、極めて重要な役割を果たしています。

日本のプロ野球を人気スポーツに押し上げ、高度経済成長の象徴にもなった長嶋茂雄さんと、ONのブランドは永久に不滅ですね。

氏名の商標登録を検討する方へのアドバイスとお問い合わせ情報

著名人だけでなく、ビジネスや活動名で氏名をブランド化したい方にも、商標登録は有効な手段です。登録を検討されている方は、ぜひ商標専門の弁理士にご相談ください。調査から出願、権利活用までをトータルでサポートいたします。