曲のタイトルは商標で保護できる?商標専門弁理士が解説

曲のタイトルは商標で保護できる?商標専門弁理士が解説

人気曲のタイトル、勝手に使われたらどうする?

せっかく生み出した楽曲のタイトルを、
誰かが商品名・イベント名・店舗名として無断で使っている――。

「これは著作権侵害では?」と思って調べてみたら、「曲名には著作権がない」と言われてショックを受けた。
では、商標登録で守ることはできるのか?

この記事では、商標専門弁理士が「曲名の商標登録の可否と注意点」について、わかりやすく解説します。


曲名に著作権はあるのか?

まず結論から言うと、曲名そのものには、基本的に著作権は認められません

著作権が認められるには、ある程度の創作性・独創性が必要ですが、短いタイトルや単語には著作物性がないと判断されるのが一般的です。

そのため、曲名を守りたい場合には、著作権以外の保護手段を検討する必要があります。
その一つが「商標登録」です。


曲名そのものは、商標として保護できないのが原則

ここで重要なポイントです。

商標は、「自分と他人の商品やサービスを識別するための標識(自他商品・役務識別標識)」である必要があります。
つまり、CDの曲名として使われるだけでは、自他識別機能を果たしておらず、商標的使用とは認められません

以下のような使用例では、商標登録できないか、仮に商標登録できたとしても侵害を訴えることは難しいと考えられます。

  • CDジャケットや配信画面に曲名が表示されているだけ
  • 単なる楽曲タイトルとして記載されているだけ

このような使用では、商標登録の対象外」「商標権の効力が及ばない」と判断されるのが通常です。

したがって、曲名が同じだから商標権を取得して訴える、ということはできません

hoyano
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広瀬香美さんの権利管理会社が、大ヒット曲名の「ロマンスの神様」を「音楽の演奏,楽曲・歌詞の提供」等の分野で商標出願しましたが、審査で拒絶されてしまいました(商願2023-1022)。「これらのサービスに関して収録、提供される音楽の曲名を表示したもの」=「役務の質を普通に用いられる方法で表示したもの」として認識するためです。本人の承諾や関係会社であっても登録できないのです。


それでも商標登録できるケースとは?

曲名そのものは難しくても、その名称が「ブランド」として使われている場合は、商標登録が認められる可能性があります。

✅ 条件①:「ビジネスブランド」として使用する

  • 曲名を冠したライブツアー、イベント、アパレル、グッズ展開など
  • 例:「〇〇」という曲名で、Tシャツ・キャップ・キーホルダーを展開している

このように、商品やサービスの名称として使われている場合には、商標的使用と認められやすくなります

✅ 条件②:商標としての識別力がある

  • 一般的な単語(商品「ミックスナッツ」に「ミックスナッツ」、群青色の商品に「群青」など)では、識別力がないとされ、登録が拒絶されやすい
  • 造語独自の言い回し指定商品・役務と無関係の単語であれば、登録の可能性が高まります
hoyano
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上記の「ロマンスの神様」は、「音楽の演奏,楽曲・歌詞の提供」等の分野では登録できなかったものの、「スキー場の提供,スキー又はスノーボードに関する技術又は知識の教授」等の分野では登録になりました(不服2023-21361)。これは曲名としての使用ではなく、これらのサービスの名称としての使用(=商標としての使用)なので、「役務の質を普通に用いられる方法で表示したもの」に該当しないからです。


商標登録によるメリットと限界

✅ 登録できた場合のメリット

  • 他人がその名称を使ってイベントや商品を展開することを防げる
  • ライブやグッズ、メディア展開などのブランド戦略の基盤として活用できる

✅ 登録しても限界はある

  • あくまで「商標」としての使用を対象にした権利
  • 楽曲そのものの保護(演奏、配信、録音など)には影響しない
  • 他人がレビューや解説の中で曲名を使うことを制限するものではない

弁理士に相談するメリット

✅ 登録可能性を事前に見極められる

  • 使用実態が「商標的」と認められるかどうか
  • 類似商標がすでに存在していないか
  • これらを総合的に判断して、出願の可否やリスクを整理できます

✅ 音楽業界に適した区分や出願方法を提案できる

  • 音楽・イベント・物販など、多様なビジネス形態に合わせた最適な商標戦略を構築できます

まとめ|曲名を守るには、商標登録という選択肢も

  • 曲名自体には著作権がなく、無断使用を防ぐには限界があります
  • ただし、曲名を使った商品・サービスのブランド展開がある場合には、商標登録で保護が可能です
  • どこまで守れるのか?どう出願すべきか?に悩んだら、商標専門弁理士にご相談ください。