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商標を譲渡(売却)しても、それだけでは名義は変わりません
商標を他人に譲った(売却した)という場面は珍しくありません。
ですが、「契約書を交わしたから、それで名義変更も完了しているはず」と考えるのは危険です。
実は、商標の出願人や登録名義人が変わった場合、特許庁への正式な届出を行わない限り、名義変更は成立しません。
この記事では、出願中と登録後のそれぞれの場面で、他人への商標移転時に必要な届出・登録手続きを、商標専門弁理士が詳しく解説します。
「移転」と「表示変更」はまったく異なる手続きです
まず大前提として、以下の違いを確認しておきましょう:
- 「表示変更」…同じ人・法人の名称が変わっただけ(例:株式会社A → 株式会社Aホールディングス)
- 「移転」…権利そのものが他人へ移る場合(例:譲渡・贈与・相続・M&A など)
今回はこの「移転」の中の「譲渡」があった場合の手続きに絞って解説します。
出願中の商標を他人に譲渡した場合
✅ 提出すべき書類は「出願人名義変更届」
- 手続名称:出願人名義変更届
- 手数料:特許印紙4,200円/件(2025年現在)
- 添付書類:譲渡証書(又は権利の承継を証明する契約書等)
- 提出後、書類に不備がなければ、出願人の名義が変更されます
※1件ごとに手続が必要ですが、内容が同じであれば複数件まとめて提出することも可能です(その場合も、特許印紙代は件数分必要)。
登録済の商標権を他人に譲渡した場合
✅ 提出すべき書類は「商標権移転登録申請書」
- 手続名称:商標権移転登録申請書
- 手数料:収入印紙30,000円/件(2025年現在)
- 添付書類:譲渡証書(又は権利の承継を証明する契約書等)
- 登録手続が完了すれば、移転先が正式な権利者として登録されます
🔍 参考:
https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/iten/tetsuzuki_03.html
移転登録をしないとどうなる?放置リスクに注意
✅ 法的には「まだ元の持ち主のまま」
- 譲渡契約を結んでいても、特許庁の原簿が変更されない限り、第三者から見て「権利者」は旧名義人のまま
- 譲渡先が登録されていないと、ライセンス契約や差止請求等の権限が発生しません
✅ 通知が届かず、防御の機会を失うことも
- 無効審判、異議申立て、不使用取消審判などの通知は旧名義人に送付されるため、新権利者が対応できずに不利な結論になるおそれがあります
弁理士に依頼するメリット
✅ 契約書作成・譲渡証書の整備から手続まで一括対応
- 実務で使える譲渡証書の形式や内容を精査
- 印紙の額、書類の整合性、手続のタイミングまで適切に管理
✅ 複数商標の一括移転や海外対応も可能
- 事業譲渡やM&Aによる一括処理
- 国際出願(マドプロ)との連動、各国での名義変更も視野に入れた戦略支援が可能です
まとめ|商標を移転したら、特許庁での登録手続きが必要です
- 商標を譲渡・売却しても、それだけで名義変更は成立しません
- 特許庁への届出(出願中:出願人名義変更届/登録後:商標権移転登録申請書)を必ず行うことが必要です
- 手続に不安がある場合や、スムーズに進めたい場合は、商標専門弁理士へのご相談をおすすめします