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会社名や氏名を変更したけれど、商標の届出はどうする?
商号変更や個人の改姓などで社名・氏名が変わったとき、「商標出願や登録には何か届出が必要なのか?」と疑問に思われる方も多いかもしれません。
実は、出願人や登録名義人の名称が変わった場合には、特許庁に対する正式な届出が必要です。
この記事では、商標専門弁理士の視点から、社名・氏名変更時に行うべき届出手続きと、放置することで生じるリスクについてわかりやすく解説します。
名称変更と「移転登録」はまったく別の手続きです
商標制度上、「名称変更(表示変更)」と「譲渡などによる移転」は明確に区別されています。
- 名称変更:同一人物・法人が継続して権利を有する前提で、登記上の名称だけが変わった場合
- 移転登録:権利が別の人や法人に完全に移転される場合(売却・事業譲渡など)
名称変更は、「同一主体」であることが前提のため、正しい手続きを経ればスムーズに原簿上の表示を変更することができます。
出願中に社名や氏名が変わった場合:氏名(名称)変更届を提出
商標出願中に社名や氏名が変わった場合は、「氏名(名称)変更届」を提出する必要があります。
- 識別番号(申請人登録)をしている場合:1通の届出で、すべての出願に一括して変更を反映できます
- 識別番号がない場合:まずは識別番号の付与を請求する必要があります
- 届出先:特許庁長官
- 記載事項:識別番号、住所又は居所、旧氏名(名称)、新氏名(名称)など
- 収入印紙代はかかりません
▶ 詳細案内:
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/tetuzuki/isdn_yoshiki.html
登録後に社名や氏名が変わった場合:登録名義人の表示変更登録申請
商標登録済みであれば、登録原簿の表示変更のため、「登録名義人の表示変更登録申請書」を提出します。
- 届出先:特許庁長官
- 記載事項:登録番号、旧氏名(名称)、新氏名(名称)、申請人の住所・氏名(名称)など
- 申請時には収入印紙代が必要になります(2025年現在:登録1件につき1,000円)
- 登録番号ごとに申請(複数件まとめて提出することも可能(その場合も、収入印紙代は件数分必要))
▶ 詳細案内:
https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/iten/tetsuzuki_01.html
放置した場合のリスクとは?
✅ 特許庁からの通知が届かなくなる可能性
社名・氏名の変更を届け出ないまま放置すると、以下のようなリスクが生じます:
- 審査書類や拒絶理由通知が届かず、期限内に対応できない
- 出願が却下されたり、権利消滅に気づかないまま放置してしまう危険性
✅ 異議申立てや無効審判などで対応機会を逸するおそれ
- 第三者からの異議申立て、無効審判、不使用取消審判などの通知が届かず、反論できないまま手続が進行する可能性があります
弁理士に依頼するメリット
✅ 手続きの正確な判断と書類作成
- 単なる「表示変更」で良いのか、それとも移転に該当するのか
- 必要書類や添付資料の有無を的確に判断し、適切な形で提出
✅ 複数出願や登録を一括管理できる
- 複数案件をまとめて変更申請したい場合にも対応
- 登録番号の管理や今後の更新も含めてトータルでサポート可能
まとめ|名称変更も、商標の法的メンテナンスの一環です
- 出願人や登録名義人の社名・氏名が変更されたら、特許庁への正式な届出が必要です
- 放置すると、通知不達や手続きミスにより、思わぬ不利益を被るリスクがあります
- 不安な場合は、商標専門の弁理士に相談して、正しく確実に手続きを進めましょう