セクシー音楽ユニットはなぜ改名したのか?

2017年6月22日

持続可能なブランドコミュニケーションをつくる
「サムライツ」の弁理士、保屋野です。

いわゆるセクシー女優による音楽ユニット「乙女フラペチーノ」。
「美少女戦士セーラームーン」の主題歌「ムーンライト伝説」をカバーするなど、精力的に活動していましたが、317日に「おとといフライデー」という名前に改名しました。

アダルトだけに「大人の事情」とのことでしたが、そこには商標の問題があったようです。

「乙女フラペチーノ」は、平成26421日に、所属事務所が商標出願していました。
広告や小売、芸能の分野の役務を指定し、1度は審査で拒絶されたものの、平成271120日に商標登録されました(登録第5807347号)。

しかし、「フラペチーノ(FRAPPUCCINO)」は、frappe(フラッペ)」と「cappuccino(カプチーノ)」を組み合わせた造語であり、スターバックスコーヒーで提供される飲料の名前で有名ですし、何件か商標登録されています(登録第4577358号、登録第5232552号、登録第5735653号他)。

そこで、この登録はおかしいとして、スタバ側は「乙女フラペチーノ」に対して「登録異議申し立て」を行いました。
1年ちょっとの審理を経た結果、特許庁は下記のように判断しました。

・「乙女フラペチーノ」の商標登録を取り消すべき。
・「フラペチーノ」は、スタバの「コーヒー・果汁等と氷を攪拌した飲料」及び「コーヒー・果汁等と氷を攪拌した飲料の提供」サービスを表示するものとして、日本では広く認識されている。
・人は「乙女フラペチーノ」の「フラペチーノ」の部分に注意を強く惹かれ、印象付けられるとみられるから、スタバの「フラペチーノ」と類似する。
・「フラペチーノ」は著名で独創性の高い造語であるし、グループ名としての名称を採択するに当たり、同じ文字をその構成中に使用すべき必然性はなく、偶然の一致といえない。つまり、著名な「フラペチーノ」にただ乗りして、顧客吸引力、信用、評判等を不正に利用するものである。
・セクシー女優のユニット名で、卑猥なイメージを与える商品が販売されていることが推認されることから、「フラペチーノ」のブランドイメージを希釈化又は汚染するおそれもある。
・したがって、「乙女フラペチーノ」に接する取引者・需要者は、著名な「フラペチーノ」やスタバを連想・想起し、スタバと経済的・組織的に何らかの関係を有するかのように、出所の混同を生ずるおそれがある。

こうして、「乙女フラペチーノ」の登録が取り消されたので、「おとといフライデー」に改名したようです。

ある程度活動をしてからの改名は、話題になるといういい面もありますが、ウェブサイトや印刷物やグッズなどの表示を変更しなければならず、コストが非常にかかります。

今回の商標は誤って登録されてしまったものと思いますが、
やはりネーミングや調査の段階で、「この名前で問題ないだろうか?」「どんなリスクがあるだろうか?」と考える(弁理士に相談する)ことは重要です。

(参考:異議2015-900398