新しい市場を創るときは「新しい言葉」を作る

新しい市場を創るときは「新しい言葉」を作る

※2023年10月31日配信メルマガVol.252より抜粋(一部加筆修正あり)

新しいジャンル名を作って価値を伝える

世の中に新しい市場を創る際や、
既存市場の中の新しいポジションを示す場合、
見込客にその価値が伝わらりづらいため、
なかなか市場が広がらない…といったことが起こりがちです。

そこで、
自社商品名やサービス名とは別に、
そのジャンルを表す「新しい言葉」を作ることで、
見込客に価値が伝わりやすくなるようにして、
市場を広げる手法がよく取られています。

日清が作る「完全栄養食」市場と商標出願

例えば、日清の大ヒット食品シリーズ「完全メシ」は、
ビタミン・ミネラルなど33種類の栄養素とおいしさの
“完全なバランス”を追求した商品ブランドですが、
こういった「栄養とおいしさの完全なバランスを求めた食品」のことを
完全栄養食」と名付けているんですね。
https://www.nissinkanzenmeshi.com/

一番最初に名付けたのは日清ではないかもしれませんが、
少なくとも何件か「完全栄養食」を商標出願して、
そのうち1件は商標登録されています(登録第6625042号)。
(ただし、食品の分野では特許庁で争っていて、
紙媒体/電子媒体の刊行物の分野で商標登録されています)

そして面白いのは、
こういう”しっくりくる”使い勝手のいい言葉が誕生すると、
他のブランドでも「完全栄養食」と名乗る商品が続々と登場してくるのです。

例えば、
Huel」というプロテインのブランドや、
昨年東証グロース市場に上場した「BASE FOOD」も、
「完全栄養食」という言葉を使っています。
https://jp.huel.com/
https://basefood.co.jp/

これらは、日清で使っている「完全栄養食」とはやや違った商品ではあるものの、
言葉から連想される機能は近いものがありますよね。

ネット上のまとめ記事でも、
完全栄養食のおすすめランキング
のようなものが出てきて、
完全栄養食はこういうものだ、という
ざっくりとした認識が浸透しつつある
ように思います。

新ジャンル名を商標登録できても、できなくてもメリットあり

ここで、もし日清が食品分野でも「完全栄養食」を商標登録することができれば
「完全栄養食」を使いたい企業に対して、
商標の使用に対するコントロール権を持つことになります。

つまり、登録した分野では「「完全栄養食」を使わないで」とも言えるし、
使いたかったらライセンス料を払って」と言うこともできます。

しかし、商標権を取得せずに、
あえて他者に広く使用してもらうことも、実はかなり有効なのです。
と言うのも、冒頭の通り、
新しい市場や、既存市場の新しいポジションでは、
見込客にその価値が伝わらりづらいため、
なかなか市場が広がらないからです。

つまり、他者にも同じ「完全栄養食」の言葉を使用してもらうことで、
見込客に認知してもらいやすくなり、
価値が伝わりやすくなる結果、
自社にも恩恵があるからです。

競争戦略において、リーダー企業は、
需要の拡大」を戦略目標にして、
あえてフォロワー企業の挑戦を受ける
といった手を打つことがありますが、
まさにその発想で、商標の使用に関してもオープン化してしまうのですね。

説明的な商標のオープン化戦略

もちろん、変な言葉の使い方をされないために、
商標の使用に対するコントロール権として
商標権が取れるのであれば
それに越したことはありません。

ただ、日清が苦戦しているように、
このような「商品やサービスの説明的な商標」は
一般に登録されづらい傾向にあります。

したがって、商標権が取れない可能性も多分にありますが、
仮に取れなかったとしても、
その言葉が広まることで
自社にもいくぶん恩恵がある
ので、
気持ちを切り替えて、多くの企業に言葉を使用してもらう方向に動けばいいでしょう。

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