たとえ商標が取れなくても独自のポジションを名乗る

たとえ商標が取れなくても独自のポジションを名乗る

※2022年9月27日配信メルマガVol.195より抜粋(一部加筆修正あり)

「薬用せっけん」と言えば「ミューズ」

ご家庭などで、「薬用せっけんミューズ」を使ったことがある方は多いのではないでしょうか。

ミューズ」は、日本初の薬用せっけんで、
1953年にミツワ石鹸という会社が販売開始しました。
1975年に同社が経営破綻してからは、
P&Gジャパンが事業を承継し、
その後2008年にレキットベンキーザー・ジャパンが事業を承継することになり、
現在に至ります。

「ミューズ」は「薬用せっけん」なので、
厚生労働省から承認された「医薬部外品」に当たります。
つまり、殺菌・消毒の効果を謳うことができるんですね。

CMでも「♬薬用せっけんミューズ」のサウンドロゴが印象的で、
「薬用せっけん」と言えば「ミューズ」のイメージがありますよね。

この「薬用せっけん」という立ち位置が絶妙で、
「ミューズ」は独特の地位を築いているのではないかと思います。
というのも、「薬用」と強調することで、
お客さんの頭の中に
せっけんって全部薬用というわけではなかったんだ
ミューズは普通のせっけんと違うんだ
という意識を持ってもらうことができるからです。

「ミューズ」は新しい市場を作った

「ミューズ」のミツワ石鹸は、
花王やライオンといった大手のトイレタリー用品の会社がある中で、
「薬用せっけん」という新しい市場を作ったんですね。
これにより、大手と戦わずにポジションを築いていったわけです。

そして、新しい市場を作ることは、
ブランディングの上でも利点があります。
有名タレントを起用した高額の広告を打たなくても、
お客さんに印象付けることができる
からです。

つまり、大手が資本力を活かして広告費を吊り上げることで参入障壁を築いていくのに対し、
さほど広告費をかけなくても、
独自のポジションでブランディングしていくことが参入障壁になっていくのです。

独自のポジショニングで利益率が高くなる

事実、レキットベンキーザーは、
世界最大の一般消費材メーカーのP&Gよりも利益率が高いです。
(2022年6月期の純利益率で見ると、19.54%と15.64%)

そして、独自のポジションでブランディングするために、
CMで都度「薬用せっけん」と呼称していたのがポイントだと考えられます。
お客さんの頭の中に「薬用せっけんといえばミューズ」の記憶を作ることができるからです。

もちろん、「薬用せっけん」は商品の内容を説明的に表した言葉なので、
商標登録は難しいです。
したがって、他社も(厚労省の承認があれば)名乗ることができます

しかし、たとえ他社も使っていたとしても、
「薬用せっけんといえばミューズ」の記憶を作ることができれば、
その地位を譲ることはない
でしょう。

そう考えると、何も商標登録を取ることだけが、
ブランディングではないことがわかります。
たとえ商標が取れなくても、独自のポジションを名乗り続けることは、
意味があると言えますね。

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