商標はただ更新すればいい、というわけではない

商標はただ更新すればいい、というわけではない

※2021年5月11日配信メルマガVol.123より抜粋(一部加筆修正あり)

更新よりも「新しく出願しなおす」方がいい場合もある

先日、とあるお客さまの商標の更新時期が近づいてきたので、
更新すべきかどうかの指示を仰ぐためのご連絡をしました。

しかし、よくよく現状を考えて、権利の更新ではなく、
文字商標として新しく出願しなおすことをご提案しました。

その理由は2つあります。
1つ目の理由は、
10年前に取った権利なので、権利の内容が少々古いから。
つまり、ロゴマークが変更されているので、
古いロゴのまま権利維持すると、
現在のロゴを保護することができない
可能性があります。

また、指定商品・役務の内容が、
現状のビジネスに合っていない(または不足している)
可能性があるので、
このままでは、せっかく権利を持っていても、
ビジネスをカバーできていないところが出てきて、
その部分で、類似の商標を他者に使われてしまったり、
逆に登録されてしまったりする恐れがあります。

2つ目の理由は、
こちらの権利は個人名義となっているから。
10年前とは異なり、現在は法人化して法人で使っているので、
更新するとしても、法人名義への権利移転が必要になります。
そうすると、更新以外にも権利移転費用がかかってしまいます。

新しく出願しなおすメリット・デメリット

メリット

この点、新しい出願にすれば、
最新の指定商品・役務の内容で、
現状のビジネスに合わせた権利内容にする
ことができる
初めから法人名義で権利化できる
というメリットがあります。

デメリット①審査で拒絶になるかもしれない

ただし、新しく出願しなおすデメリットもあります。
1つ目のデメリットは、
1から審査することになるので、
もしかしたら審査で拒絶が出る可能性があること。

10年前に一度登録されているのに?
と思うかもしれませんが、
当然出願する商標が違えば、
審査対象は判断内容も異なって
きます。
権利範囲も変わるため、引っかかる先行商標も変わってくるんですね。

デメリット②出願〜登録の費用がかかる

2つ目のデメリットは、
出願から登録までの費用がかかること。
前の出願とは別の新しい出願になるので、
どうしても1から費用がかかってしまうんですね。

時には、審査で拒絶理由が出て、その対応費用が必要になることもあります。
資本力が弱いと、なかなかの出費になります。

デメリット③権利の空白期間が生じる

3つ目のデメリットは、
現在の権利の消滅後から新しく出願した件の登録までの間、
権利の空白期間が生じること。

同じ名義の場合は、空白期間が生じないようにすることもできるのですが、
個人名義法人名義は、いくらその個人が代表者であろうと、
法律上は別人格なので、「異なる名義」になります。

そうすると、現在の権利が存在する間は、
類似の商標である新しい出願の方は、登録できない
ことになります。
したがって、現在の権利が消滅して、
なおかつ更新の猶予期間も過ぎてから、
新しい方が登録される
ことになります。

この間に、権利の空白期間が生じるんですね。

以上を総合判断して、
そのお客様は「新しく出願」を選択されました。

このように、状況に合わせて手段を選択することが重要ですね。

【サムライツ(R)】公式メルマガ(無料)
  *
  *
メールアドレス  *