持続可能なブランドコミュニケーションをつくる
「サムライツ™」の弁理士、保屋野です。
商品やサービス名は、特徴のわかりやすい名前の方が、
顧客に伝わりやすくて望ましい、と考える方は多いのではないでしょうか。
とはいえ、商標登録の世界では、
商品やサービスの “説明的な商標” は、登録されづらいのです。
例えば、「訪問歯科ステーション」という言葉が、
「歯科医業」等のサービス分野で商標出願されたのですが、
「訪問して歯科治療をおこなう拠点」
であることを表すものと理解、認識させるとして、
拒絶されてしまいました(不服2014-24397)。
サービスの説明的な商標だから、
一私人に独占させるべきでない、という理由に基づきます。
商標は、他者の商品・サービスと、自社の商品・サービスを見分けるための言葉や図形等のことをいいます。
他者が自社と同じような商品・サービスを扱う際、
その内容を説明するような言葉は、そもそも見分けがつきにくいですし、
その他の業者だって使いたい言葉かもしれません。
だから、登録して独占させてしまうと困るので、登録を認めていないのですね。
それと、仮に登録されたとしても、
同業他社がこぞって似たような説明的ネーミングをしたり、
消費者が、「一般名称的に」その言葉を使い始めたりするかもしれません。
この場合は、登録した商標の「他者商品・サービスとの見分ける力」がなくなって、
他者を排除する力を失い、権利としては弱いものになってしまいます。
せっかく登録を受けて権利化しても、リスクがあるのですね。
ちなみに、その言葉が商品やサービスの内容を表す言葉として、
実際に広く一般に使用されている事実があるかどうか、
は関係ありません。
商品・サービスの内容を示すものとして、
“認識され得る” というものでも、
登録を受けることができないのですね。
(参照:平成12年(行ケ)第76号「負圧燃焼焼却炉」判決)
一方で、特定の意味をなさない造語は、
商品やサービスの説明的な商標より、登録されやすいです。
商標登録の可能性や、似たような他者商標の出現可能性を考えれば、
できれば造語がいいけれど、
お客さんのためには、商品・サービスの内容を暗示させるような要素が含まれるのが望ましい。
ネーミングの際は、持続的なブランド構築の視点も入れつつ、
このギリギリのところを狙っていけるといいですね。