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皆さんは「地域ブランド」と聞くと、
どんなことを思い浮かべますか?
もしかしたら、「北海道」とか「京都」とか、
地域そのもののブランド力のことをイメージされる方が多いかもしれません。
あるいは、農産物にしても、
ついつい規模の大きな自治体が取り組む事業なのではないかと、
思ってしまいますよね。
★人口わずか426人でオンリーワンの「地域ブランド」
ところが、人口わずか426人、世帯数262世帯の村が、
オンリーワンの地域ブランドを育てていて、
2018年には年間3億4千万円も売り上げたと聞くと、
ちょっと驚きませんか?
(令和2年度末時点)
その村が「和歌山県北山村」です。
三重県と奈良県に囲まれた、
日本で唯一の飛び地の村として有名ですが、
それが地域ブランドというわけではありません。
日本でこの北山村でしか栽培されていなかった
柑橘系の果物である「じゃばら」が、
全国から注目を集めているんですね。
「じゃばら」という名前は、
“邪気を払う”ほどに酸っぱいことが由来で、
村人たちからは縁起物として
親しまれてきたようです。
この「じゃばら」の何がすごいかと言うと、
花粉症に効果があると言われている
「ナリルチン」を含んでいる点です。
「花粉症に効く幻の柑橘」として、
ニュースなどで取り上げられて、
話題になったんですね。
★苦難の時代
ところがこの「じゃばら」
最初から事業がうまくいったわけではありません。
知名度がないために販路が狭く、
常に余剰在庫を抱えて、生産調整をするほどでした。
村内や近隣に卸売りするものの、
村の97%は山林で、
しかも飛び地ということもあり、
交通の便が悪いことがネックとなり、
なかなか販売に繋げられなかったのですね。
★転機
転機となったのは、平成13年に直販サイトを開設した頃です。
“インターネットで「花粉症モニター」を募集”し、
“100%果汁300mlを試飲”する無料キャンペーンを実施しました。
“募集枠は2日間で約1万人に達し、モニターの約半数の人から「効果があった」と回答”
があったそうです。
(「わかやま食ブランドストーリー」というPRパンフレットから引用)
それで詳しく調べたところ、
「じゃばら」に花粉症の原因となる現象を抑制する機能があることがわかりました。
この成分については、
「抗アレルギー用組成物」として特許も取得しています(特許第5323127号)。
こうして、「じゃばら」はマスコミに大々的に取り上げられるようになり、
花粉症に悩む人たちによって、クチコミが広まったというわけです。
★「じゃばら」事業の今
「じゃばら」の事業は、
北山村の地域事業課の事業として運営されてきましたが、
一昨年に「株式会社じゃばらいず北山」として独立させ、
民営化しました。
やはり、民営化した方が、
決済などの意思決定のスピードや事業拡大、
人材確保の面で利点があるんですね。
それから、「じゃばら」は商標登録の方も力を入れています。
「じゃばらいず北山」名義で調べてみると、
25件の登録と1件出願中の商標があります。
最初の8件こそ、
元々別の会社の商標登録でしたが、
わざわざ、商標登録の取消制度を使って、
相手の商標の取り消しを請求したんですね。
そうしないと、権利侵害で訴えられるかもしれない状態なので、
致し方ありません。
ただ、単純に取り消しが目的だったというわけではなく、
一方で、その相手方と交渉を進めていたようです。
結局、その8件の権利は、北山村が譲り受け、
それを「じゃばらいず北山」が受け継ぎました。
現在は、地域が一体となって
「じゃばら」ブランドの価値の維持と更なる向上のための
さまざまな取り組みをしています。
例えば、ドリンクやお菓子や調味料、化粧品など、
さまざまな商品展開をしたり、
レシピ開発をしたり、
「じゃばライダー1号、2号」という非公認ヒーローを作ったり、
「奇跡のじゃばら」という公認ソングを作ったりしています。
このように、
規模が小さな村であっても、
地域の資源の他にはない特徴を見つけ出して、
それを活かすことで、
ビジネスを大きくすることはできるんですね。
そのためなら、
民営化だってするし、
他社との権利の交渉のために、あえて攻撃を仕掛けることもあると。
これって人間にも言えることですよね。
どんなに取るに足らない自分だと思っていても、
必ずいいところがあるし、
それを活かすことで、
思わぬ形で活躍することって、よくあります。
どんな人や企業や地域にも、
いいところや魅力は必ずあるので、
それを見つけて、磨いていくと、
とっても素晴らしい宝物、ブランドになるんじゃないかなと思います。
※参照サイト
・「じゃばらいず北山HP」
https://jabarise.co.jp
・「北山村観光サイトHP」
https://www.vill.kitayama.wakayama.jp/kanko/jabara/sales.html
・「わかやま食ブランドストーリーvol.7」
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/071700/index_d/fil/wakayamanojyabara.pdf
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