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これまで、イチゴの知的財産戦略シリーズをお届けしてきましたが、
今回もストーリーの続きをお話します。
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★イチゴ戦争!栃木と福岡のプライドをかけた戦い
皆さんもお気づきの通り、
イチゴの歴史は、栃木と福岡のプライドをかけた戦いでもあるんですよね。
福岡で「とよのか」が生まれると、栃木からは「女峰」が生まれ、
栃木で「とちおとめ」が生まれると、福岡からは「あまおう」が生まれると。
収穫量・作付面積、産出額で全国1,2を争う産地ですから、意識しないはずがありません。
ちなみに、2019年のデータによると、今のところ全て栃木が福岡を上回っている状況です。
(e-Stat「作物統計調査」より)
★「スカイベリー」の登場
ただ、栃木は「とちおとめ」という品種を日本一普及させることに成功しましたが、
高級イチゴ路線では、福岡のブランドイチゴ「あまおう」に先を越されていました。
「とちおとめ」が出てからすでに17年の月日が流れ、
そろそろ後継品種をというところで、
全国初のイチゴの研究所まで開設して、生み出したのが「スカイベリー」です。
力の入れようがすごいですよね。
事前にマーケティング調査を行ったところ、
酸味が控えめで、甘みが強く、大粒なイチゴが人気だとわかったので、
これらの特徴を盛り込んだ品種の開発に至りました。
1粒の重量は平均28gと、
平均15gの「とちおとめ」の倍近くもあるそうです。
まさに「あまおう」と似た特徴を持っていて、
バチバチに意識しているのがわかります。
プロモーション動画を見てもわかるように、
贈り物用とか、結婚式など特別な時間に食べる用を
想定しているようですね。
★「スカイベリー」の知財戦略
そんな「スカイベリー」の品種名は「栃木i27号」です。
つまり、「福岡S6号」の「あまおう」と同じく、
品種名とは別にブランド名として「スカイベリー」を商標登録しているんですね。
ただ、「あまおう」では「お菓子やパン」の分野で、
他の企業に取られてしまったということがあるので、
それを知っていたのか、
「スカイベリー」では「果実」や「苗」の分野とほぼ同時期に、
「菓子及びパン」の分野や、「冷凍果実」の分野、
「果実飲料」、「果実酒」といった分野も、
商標出願して登録を受けています。
やはりよその失敗事例に学ぶということは、大事なことですよね。
実際に栃木県は、
お土産用のお菓子などの加工食品への使用を積極的に促すことで、
「スカイベリー」ブランドの浸透を図る戦略を採っています。
お土産やさんでも、
「とちおとめ」の名前入りのお菓子は隅に追いやられ、
代わりに「スカイベリー」の名前入りのお菓子は、
お客さんに見えやすいところに並べられているのだそうですよ。
「とちおとめ」がかわいそう気もしますが、
若い子の方が見栄えがいいってことなんでしょうか。
ちなみに栃木県では、
商標の「管理要領」も策定し、
加工品に「スカイベリー」の商標やロゴを使う場合は、
必ず「スカイベリー(栃木i27号)」が含まれていないといけないとか、
他の図形や文字と重ねて使用する場合は、栃木県と協議するとか、
いろんな取り決めが記載されています。
https://www.pref.tochigi.lg.jp/g04/syouhyou/ichigo/kanri.html
これにより、品質を管理しながら、
ブランド力を維持することができるのですね。
このように、何かをブランド化していくなら、
使う商標についてきちんと登録した上で、
その使い方もルール化して、
管理していくことが大事だと言えます。
ただ、これまで「スカイベリー」の優れた点を挙げてきましたが、
商標登録の取り方の点では、
ちょっと惜しいなと思うところがあるので、
それについては、また次回共有いたします。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。