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何かネット上でものを売る際に、
LP(ランディングページ)に
キャッチコピーやキャッチフレーズを使うことは、
よくありますよね。
あなたもつい、キャッチコピーに吸い寄せられて、
購入ページをクリックしてしまったという経験、
あるんじゃないでしょうか。
キャッチコピーがあることで、
購買意欲が高まる効果があるので、
セールスライティングでは欠かせない要素の1つです。
★キャッチコピーに著作権はあるのか?
それだけ、ものを売る時には重要な役割を果たすキャッチコピーですが、
自分で考えるのはなかなか大変です。
したがって、同業だとか近い業種の人が使っているキャッチコピーを、
ちょっと使わせてもらおうかなと、つい思ってしまうんですが、
その時に、「法的に大丈夫なのかな?」と
疑問に思うことがあるかと思います。
実際に、そういったご相談をいただいたこともあります。
結論から言いますと、
「パクっても問題ないことが多いですが、
気をつけてパクりましょう」
ということです。
まず、なぜ問題ないことが多いのかというと、
「キャッチコピーには著作権が認められないことが多い」からです。
キャッチコピーって、
一文が短くて、世間にありふれた表現であることが多いですよね。
誰もが同じようにやる表現に著作権を認めてしまうと、
みんなが使いたい表現なのに使えないということになり、
表現活動が不自由になってしまいます。
だからこういった表現には創作性がないので、著作権は認められないということです。
実際の事件で、
「スピードラーニング」という英語教材の事件があります。
その広告宣伝文の中に
「音楽を聞くように英語を聞き流すだけ 英語がどんどん好きになる」
とか
「ある日突然、英語が口から飛び出した」
といったものがあるのですが、
ほとんど同じキャッチコピーが無断で使われたものの、
著作物ではないと判断されました。
文字数が少ないと、表現の幅が狭いので、
個性が表れる余地が少ない、
だから創作性がなく著作物性がないということなんですね。
(知財高裁平成27年11月10日判決 平成27年(ネ)第10049号事件)
ただし、注意点が3つあります。
1つ目は、著作権が認められる場合もあること
2つ目は、著作権が認められなくても、パクると炎上する可能性があること
3つ目は、商標登録される可能性があること
です。
★著作権が認められる場合
1つ目の著作権が認められる場合ですが、
一文が短くても、創作性がある場合は、著作権が発生しています。
以前、5・7・5調の交通標語に、
著作物性が認められたことがありました。
これは、
「ボク安心 ママの膝より チャイルドシート」
というチャイルドシートの着用啓発のスローガンの事件です。
リズミカルに表現されてて、
家庭的なほのぼのとした車内の風景が効果的に描かれてるよね、ということで、
個性が十分に発揮されてるから、創作性あり、
つまり著作権が認められると判断されました。
(東京地裁平成13年5月30日判決 平成13年(ワ)第2176号事件)
ちなみに、訴えられた方の表現は
「ママの胸より チャイルドシート」
というスローガンだったのですが、
同一とは言えないということで、
結局は著作権侵害にはなりませんでした。
したがって、こういう短い表現の場合、
仮に著作権が認められたとしても、
少し文体を変えることで、
侵害ではなくなる可能性があります。
★炎上の可能性
2つ目の炎上の可能性については、
裁判等での争いの有無にかかわらず、現代ではよく起こります。
つまり、実際は法律的に問題ないとしても、
“なんか似た感じで、腹立つな”ということで、
ファンなどの感情を逆撫でして、
ネット上で炎上することはよくあるんですね。
こうなると、社会で最も重要な「信用」を失ってしまうので、
結構な痛手を追うことになります。
これが現代社会の難しい所ですよね。
キャッチコピーについても同様で、
こういったご相談をいただく場合は、
「著作権法的に問題なくても、炎上の可能性はありますよ」
とお伝えすることにしています。
★商標登録されることは?
3つ目の商標登録についてですが、
単に商品やサービスの宣伝広告文というだけでなく、
造語としても認識されるような場合は、
商標登録される可能性があります。
昔はキャッチコピーやキャッチフレーズは、
審査で拒絶されやすかったのですが、
何年か前に審査基準が変わって、
少し登録されやすくなりました。
商標登録されているキャッチコピーは、
商品やサービスが似ていると商標権侵害になって使えないことがあるので、
やはり注意が必要です。
ちなみに、登録されているキャッチコピーの例としては、
ニトリの「お、ねだん以上。ニトリ」(登録第5292375号)とか、
コスモ石油の「ココロも満タンに」(登録第5896748号)とか、
味の素の「あしたのもと」(登録第4421775号)などがあります。
以上、キャッチコピーには著作権がないことが多いですが、
著作権がある場合もあって、その見分けがつきにくいことと、
パクると炎上リスクがあること、
場合により商標登録されてる場合があること、
にご注意いただければと思います。
基本的には、なるべくパクらず、
パクるとしても、みんなが普通に使っているようなキャッチコピーを使うのが無難だと言えます。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。