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★「不知火」と「デコポン」
あなたは「不知火(しらぬひ)」をご存知でしょうか?
「「不知火」?知らないな〜。鬼滅の刃に出てくる煉獄さんの技じゃないの?」
と思う人もいるかもしれません。
ではもう1つ、「デコポン」はご存知でしょうか?
「あ〜それなら聞いたことあるよ。でべそみたいな出っ張りのあるミカンでしょ?」
そうです、その「デコポン」です。
「不知火」も「デコポン」も同じみかんの名前なのですが、
「不知火」は品種の名前で、
「デコポン」は「不知火」のうち品質の高いもののブランドの名前なんですね。
じゃあどれくらい品質が高いものが「デコポン」になるのかというと、
「不知火」の中でも、
甘さを測る糖度が13度以上、
酸っぱさの元になるクエン酸が1.0%以下のものだけが
「デコポン」の対象になります。
また、日園連と言う農協のグループに属した農業団体から出荷されているものが
「デコポン」と名乗れます。
そしてこの「デコポン」のブランド名は商標登録されているので、
条件に当てはまらない場合は「不知火」と呼ぶしかないということです。
(登録第2495156号)
こうして「デコポン」は、
きちんと品質管理した上で、
商標登録もして、
なおかつ商標を使うことのできる条件を設定することで、
品質の高いブランドを維持しています。
★業者が間違えて名称をつけてしまうことも
ところが時々、袋いっぱいにつめられた安い「デコポン」が並んでいたりします。
私も先ほど、スーパーに行ったら、
4個入りで580円の「デコポン」の横に、
6個入りでほぼ同じ値段、598円の「デコポン」があるのを見かけました。
6個入りの方は包装がやや雑なんですよね。
よく見ると、
4個入りの方には「デコポン」のシールが貼ってあって、
6個入りの方には貼っていません。
そして、このシールについては、ちゃんと商標登録されています。
(登録第5217658号)
つまり、ひょっとするとシールの貼ってない、安い6個入りの方は、
「デコポン」ではなく単なる「不知火」である可能性があります。
これは、名称の使用についてあまり気にされない業者の方が、
悪意なく(?)やってしまいがちなケースの1つです。
「不知火」なのに「デコポン」表記。
この表記を見た消費者からすると、
安い「デコポン」の方でいいじゃんと思うわけですね。
もちろん、私が見た6個入りのものが、
「デコポン」じゃないとは限りませんが、
シールが貼ってないと、ちょっと信頼できないなと思います。
★ブランドを管理するために
こういう、本来条件を満たしていないのに、
ブランド名を使われてしまう事態を避けるためには、
文字の商標登録をする他に、
3つのことが必要だと考えられます。
それは、
①卸売業者、仲卸業者、小売店、ネットショップ、各種メディアなどにおいて、
名称の使用についてきちんと注意喚起しておくこと
②ロゴを商標登録して、そのロゴをシールなどにしてつけておくこと
③消費者向けに、見分け方を情報発信すること
です。
つまり、ブランドを管理するためには、
・品質管理するだけ
・商標登録するだけ
ではなく、
・商標の使い方の管理
も必要だということですね。
こうすれば、
ブランドの表示と、ブランドの品質とが一致して、
消費者が安全にものを買うことができるし、
生産者も利益を失わずに済むのですね。
★「デコポン」は、「不知火」とは限らない?!
ちなみに、「デコポン」は、
「不知火」以外のミカンでも、
基準を満たせば名乗ることができます。
例えば、
広島の「安芸の輝き」や、
佐賀の「佐賀果試34号」、
鹿児島の「大将季(ダイマサキ)」、
熊本の「肥の豊(ひのゆたか)」
が挙げられます。
このように、ミカンの名称1つとっても、
かなり奥が深いんだと言うことがわかるかと思います。
※配信時点の判例通説等に基づき、個人的な見解を述べています。唯一の正解ではなく、判断する人や時期により解釈や法令自体が変わる場合がありますので、ご注意ください。